転職面接で「あなたの欠点は何ですか?」と聞かれたら何を答えるべきか。
最初に結論の要約。
- まず心構え。欠点を自ら伝えることは、誠実であると認識してもらえ、信頼してもらうのに役に立つ。
- 大きな短所を答えてはならない。
- 応募先の仕事に関係する小さなハードスキル(ex エクセルの知識等)を欠点として答える。ソフトスキル(ex 人見知りな性格等)は答えない。
- 短所と関連性のある長所をセットで答える。
以下それぞれについて説明します。
1 転職面接で自分の短所を説明するのはかえってプラスになる
商品の小さな欠点にあえて触れることで、その企業は誠実で信頼できるというイメージが生まれるのです。それによって、商品の真の長所……を売り込む際の説得力が一段と増します。
(ゴールドスタイン=マーティン=チャルディーニ『影響力の武器 実践編[第二版]「イエス!」を引き出す60の秘訣』(誠信書房、2019年12月)137ページ)
自ら欠点を述べることで信頼を勝ち取ることができます。
そうすると、採用面接での面接官からの「あなたの弱みは何ですか?」というのは意地悪な質問ではないと言えます。
言い換えると「あなたは信頼できる人ですよね。それを説明してください。」と自己PRの機会を与えてもらっているのです。
商品の宣伝の場面では欠点を誠実に自分から申述するのが効果的。
では気になる転職面接では?
転職面接は応募者が自分の労働力を売り込む場面であり、同様にあてはまります。
転職面接でも自分の欠点の説明は自己PRになりえます。
転職面接に受かるアピール方法 | ハーバード流面接突破術で書いた通り、転職面接での自己PRには「自信過剰に陥らずに謙虚さを示す」のが重要です。
自慢すれば相手に嫌な奴と思われてしまいます。
欠点を語るのは謙虚さのアピールになるのです。

転職志望の人には耳寄りな話ですが、採用に関する調査では、履歴書に長所ばかり並べたてる応募者よりも、最初に短所や若干の不得意を明らかにしてから長所に触れる人のほうが、面接に呼ばれる確率が高くなることが分かっています。
(同上)
上記引用は書類審査の場面ですが、面接の場面でもあてはまると考えられます。
以下の他の具体例では、書類審査に限らず口頭でも短所を述べることが有効だとされているからです。
①具体例1―裁判で陪審員の信頼を得る
行動科学者のキップ・ウィリアムズらの調査によると、弁護士が相手側に指摘される前に自ら自分の申し立ての弱点に触れた場合、陪審員はその弁護士を誠実だとみなして信頼を置き、評決にあたってその主張に対する支持が増しました。
(同上)
②具体例2―中古の自動車を販売する
自分の車を売りに出して、買い手が試乗にやってきたら、その車の難点、特に買い手自身では発見できそうにない点(トランクの中のライトの調子が悪いとか、燃費はあまりよくないなど)を進んで教えると、あなたとその車に対する信用がぐんと高まります。
(ゴールドスタイン=マーティン=チャルディーニ『影響力の武器 実践編[第二版]「イエス!」を引き出す60の秘訣』(誠信書房、2019年12月)138ページ)
③具体例3―コピー機の販売交渉
ある会社にカラーコピー機を売り込むとき、その製品がセット可能な紙の枚数が他社製品より少ないのであれば、買い手の信用を得るために、そのことを先に伝えるべきです。そうすれば、その製品が本当に優れている点に関しては、他社のものとは比べ物にならないということを、難なく買い手に納得させられるでしょう。
(同上)
2 転職面接で答えてはならない短所・欠点・弱み
「欠点として何を答えるべきか」の前に、答えてはならない気をつけるべき短所を紹介します。
重大すぎる短所やソフトスキルに関する短所は答えないほうが身のためです。
(1) 重大な短所は答えるべきではない
「自分から欠点を言えば信用されるんだな?よし!」とそそっかしく結論に飛びついてはいけません。
この手法を効果的に使えるのは、短所が本当に小さい場合だけですので注意してください。
(ゴールドスタイン=マーティン=チャルディーニ『影響力の武器 実践編[第二版]「イエス!」を引き出す60の秘訣』(誠信書房、2019年12月)138ページ)
大きな欠点を述べてしまうと、取り返しがつきません。
短い転職面接の時間では挽回はほぼ困難でしょう。
「どの職場でも上司と喧嘩になってしまいます」
「遅刻が多いんです」
「会社の備品をついたくさん持って帰ってしまいます」
上記のような欠点を正直に言ってはダメです。
上記短所の回答案は我が創作ながらどれもひどい。私が面接官なら、こんなこと言ってきた応募者は絶対採用しない。
「欠点を教えてください」と言われたからといって、自分の短所全てを開示する必要はありません。そんなことは求められておらず、自分で何を言うか裁量は与えられているのです。
(2) ソフトスキルの短所を答えるのは得策ではない
- 優柔不断なところです。
- 頑固なところです。
- 飽きっぽいです。
- 短気です。
- のんびり屋です。
上記のようなソフトスキル面での自分の短所は、答えないほうが良いです。
なぜか?
これらのソフトスキルの短所は、面接官にいかようにも悪く解釈されてしまいます。
一度「飽きっぽいです」と自分から言えば、とてもキャッチーな一言であり、印象的です。
面接官にわかりやすい。
面接官は、応募者が「飽きっぽい」と言ったのと、他の事柄を自分の脳内で勝手に結びつけます。
「飽きっぽいから、採用してもすぐ辞めるんだろうな」とかです。
悪い印象を持たれると、応募者の他の面も面接官には悪く見えてしまいます。
ソフトスキルの欠点を述べれば、逆ハロー効果が働いてしまい、応募者に不利に働きます。
ハロー効果とは、ある人について、とても良い(あるいはとても悪い)何かを知っていることが、その人についてのあらゆる種類の判断を色づけるという効果のことです(リチャード・E・ニスベット『世界で最も美しい問題解決法 賢く生きるための行動経済学、正しく判断するための統計学』(青土社、2018年1月)78ページ)。
3 転職面接で答えるべき短所は、小さなハードスキル
転職面接ではどんなことを答えるべきか?
前記2を避けると、「小さな欠点で、ハードスキルに関すること」を自分の短所として述べるべきです。
ハードスキルとは。
経理知識とか、パワーポイントの経験とか、特定の技能のことです。
そうしたハードスキルであって、あまり大したことのないものを言うべきです。
とはいっても「私の短所は、飛行機を操縦できないことです」と言った仕事にあまり関係のないハードスキルのことを言ってもダメです。
あくまでその応募先の仕事に関するハードスキルであることです。
(1) 良い回答例
以下の書籍の回答例は良い例です。
人事は5年間の経験があります。ですが、労務や労働基準法に関しては前職で扱っていなかったのであまり得意ではありません。
(福山敦士『新しい転職面接の教科書~「最強の内定」を手に入れる!』(大和書房、2020年3月)148ページ)
これは「労務」や「労働基準法」(の知識)というハードスキルを弱みとして回答しています。
人事の仕事に関連するハードスキルです。
また、人事といっても幅広い分野がありますので、一部の知識がないのはやむを得ません。5年間の就業経験で全ての経験が詰めるわけではないですからね。
なので、重大な短所でもない。
よってこの回答例はすばらしい。
この書籍の回答例は続きもあってその部分もとてもよいのですが、それは後ほど紹介します。
福山敦士『新しい転職面接の教科書~「最強の内定」を手に入れる!』(大和書房、2020年3月)
(2) 良くない回答例
別書籍の回答例を紹介します。
こちらはわかりやすいくらい避けるべき回答例が書かれていました。
短所は、 飽きっぽいところがあります。 一時熱中してもすぐに冷めてしまう性格です。 昨年英会話スクールに通ったのですが3回通って辞めてしまいまし た。
(谷所健一郎『採用獲得のメソッド 転職者のための回答例』(マイナビ出版)72ページ)
上記の回答例は、見事に「ソフトスキル」で回答しています。
なんでこの回答を回答例としてこの書籍は紹介しているのでしょうか。
以下が書かれている理由です。
仕事にも影響すると思われない当たり障りのない短所を述べて、改善努力をしていると回答する。
( 谷所健一郎『採用獲得のメソッド 転職者のための回答例』(マイナビ出版)72ページ )
これを読まれてどう思われますか?
私はこの理由付けには賛成できません。
飽きっぽいというのは仕事の面接ではかなりダメージの大きい欠点の告白です。逆ハロー効果が働いてしまい、応募者がダメ人間と面接官に思われてしまいます。
「仕事に影響すると思われない当たり障りのない短所」とは言えません。
転職面接用書籍2冊から回答例をあげましたが、本によってずいぶん回答が違うんだなと思いました。
4 転職面接前には短所とセットで答えるベストマッチな長所を用意しておく
転職面接で答えるべき自分の短所は、小さなハードスキルについての短所。
業界知識がないとか、特定の分野の深い専門知識がなく広く浅くの知識しかないとかです。
しかし、転職面接ではこれだけで終わりにしてはいけません。
質問されたのなら、それは自己PRの機会が与えられたということですので、せっかく述べた短所に彩りを付け加えましょう。
アピールポイントも付け加えるのです。
「私は英語ができません。しかし、中国語ができます」とか。
本項目でのポイントは、短所に付け合せるアピールするポイントはどんなものが良いのか?という点です。
上記の「英語ダメです」について付け足す「中国語できます」は悪くありません。
他方で、「英語できません。しかし、体力には自信があります」はダメです。
中国語が良くて体力がダメなのはなぜか?
それは、組み合わせ対象となる短所との相性・関連性です。
短所に付け合せるアピールポイントは、短所に関連するものであるべきです。
社会科学者のゲルト・ボーナーらの研究によると、「両面的」な説得方法が最大の効果を上げるためには、メッセージが伝えるマイナス面とプラス面のあいだにはっきりとしたつながりが必要になります。
(ゴールドスタイン=マーティン=チャルディーニ『影響力の武器 実践編[第二版]「イエス!」を引き出す60の秘訣』(誠信書房、2019年12月)139ページ)
短所との付け合せのアピールポイントを何にするかは組み合わせをよく考えなければいけません。
上記書籍によると、社会科学者のボーナーは、あるレストランの広告を三種類作り、短所と長所の組み合わせに関する宣伝効果の違いを調べました。
広告は以下3種類です。
マイナス面 | プラス面 | |
A | なし(広告に書かず) | くつろいだ雰囲気のお店です。 |
B | 専用駐車場はありません。 | くつろいだ雰囲気のお店です。 |
C | 店内は狭いです。 | くつろいだ雰囲気のお店です。 |
宣伝Aは、マイナス面は書かない。
宣伝BとCは、マイナス面を書く。
プラス面はどれも同じ文言。
宣伝A、B、Cのどれが一番高い宣伝効果があったでしょうか。
この記事を読んでいる方には答えは簡単だと思います。
一番効果が高かった宣伝はCです。
Cの広告を見た人はマイナス面とプラス面をつなげて考えることができたのです(「狭さもくつろいだ雰囲気作りに一役買っている」など)。
見事な相乗効果。
相手からの信頼を高めることを第に考える場合は、両面的なメッセージでどのような欠点を伝えるかはさして問題ではありませんが、レストラン、商品、自分の資格など、特定の対象に対する好感度を上げたい場合は、短所には必ずそれに関連した長所を組み合わせて示す必要があります。
(ゴールドスタイン=マーティン=チャルディーニ『影響力の武器 実践編[第二版]「イエス!」を引き出す60の秘訣』(誠信書房、2019年12月)140ページ)
上記の記載にはさらっと重大なことが2つ書かれています。
- 「どのような欠点を伝えるかはさして問題ではありません」
- 「特定の対象に対する好感度を上げたい場合は、短所には必ずそれに関連した長所を組み合わせて示す必要があります」
採用面接では上記2点を頭に入れるべきです。
「こんな欠点でいいのかなあ」とあまり思い悩む必要はありません。
小さな欠点でハードスキルに関するものならOK。
それと必ず関連した長所を合わせましょう。
この点については注意が必要です。
なぜか?
面接では「弱みはなんですか?」と質問されますが、「あわせてそれに関する強みも教えてください」と親切に助け舟を面接官が出してくれるとは限りません。
面接官から言われないので、長所をあわせて答えるのを忘れてしまうかもしれないのです。
忘れないように!
ではここで良い回答例を紹介します。
人事は5年間の経験があります。ですが、労務や労働基準法に関しては前職で扱っていなかったのであまり得意ではありません。ただ、採用や採用広報に関しては得意ですし、自信もあります。
(福山敦士『新しい転職面接の教科書~「最強の内定」を手に入れる!』(大和書房、2020年3月)148ページ)
先ほど紹介した書籍の回答例です。短所の後の長所もあわせてここでは紹介しました。
この回答例は見事ですね。
短所も長所も、人事のハードスキルに関するもので、共通性があります。短所の後に長所を言ってPRで締めています。
5 「私の短所は一生懸命になりすぎるところです」と自己PRを狙うのは良くない
短所を聞かれたら、自分の長所を「~すぎるところです」と言ってアピールせよという意見があります。
私はこれはひどい回答だと思います。
なぜか。
問いに答えていないからです。
面接官からすれば、「え、何?自慢?短所を聞いたんだけど」と思う可能性があります。
問いに答えない回答は良くありません。
また、「~すぎる」というのが自慢ではなく短所だと面接官に取ってもらえたとしましょう。
たとえば、「真面目過ぎるところです」とかです。面接官には「ああ、柔軟性がないのが弱点なのね」と弱みと理解してもらえるかもしれません。
これも良くない展開です。
なぜなら、ソフトスキルの短所であるとの印象を与えてしまうからです。
どっちにしろ「~すぎる」という回答は良い回答とは思えません。
他に良い回答の仕方があるのですから、私なら選ばない回答の仕方です。
6 転職面接の「あなたの短所は?」質問には事前準備が欠かせない
転職面接で弱みを聞かれる質問について、最後に重大な点を説明します。
それは、この質問には事前準備が欠かせないということです。
準備をしておかないと、面接本番でうっかり避けるべき種類の回答(重大な短所、ソフトスキル)を述べてしまうかもしれません。
また、答えるべき短所はハードスキルですが、採用される職場に関する小さなハードスキルで自分が持っていないものを選ばないといけません。
中華料理店の面接に行って、「弱みは?」と聞かれたら、「レジ打ちができません」とか「中華鍋を使った料理が不得意です」といったその職場に関係したことを答えないといけません。
中華料理店の採用面接で、自分の短所として「ファイナンスの基礎知識がありません」と答えるのはおかしいでしょう。
さらに重要なのは、その職場にあった自分の短所を用意するだけでなく、その短所との付け合せのアピールポイントも用意しておかなければなりません。
これだけのことを面接のその場でとっさに思いつくのはほぼ不可能です。
どうすればいいのか?
事前準備あるのみです。
この記事をここまで読んだ人は、なんと!すでに事前準備が半分は済んでいます。
事前準備に必要な知識は、本記事を読んで理解しているからです。
後は、冒頭で述べた以下ポイントを理解し、ポイントの3つ目と4つ目を応募先の職場にあわせて準備しておきましょう。
つまり、短所となる応募先の仕事に関係する小さなハードスキルを事前に考え、それに合わせる長所も考えておきましょう。
- まず心構え。欠点を自ら伝えることは、誠実であると認識してもらえ、信頼してもらうのに役に立つ。
- 大きな短所を答えてはならない。
- 応募先の仕事に関係する小さなハードスキル(ex エクセルの知識等)を欠点として答える。ソフトスキル(ex 人見知りな性格等)では答えない。
- 短所と関連性のある長所をセットで答える。
この準備ができればライバルに大きな差をつけることができるはずです。
転職面接で有用な実践的な心理学に興味がある方は以下まとめ記事もどうぞ。

コメント