私の法務の仕事での英語の使用の経験は以下の通りです。
- 国内法務しかしない法律事務所(英語使用ゼロ)
- 外資系クライアントの多い法律事務所(外国人クライアントと所内のアメリカ人弁護士とのやりとり)
- 日系企業法務部(海外のグループ会社社員や海外弁護士とのやりとり)
- 外資系企業法務部(海外の親会社とのやりとり)
本記事は、法務部員の実際の英語力と求められる英語力について説明します。
要約は以下の通りです。
帰国子女等のバックグラウンドのない法務部員の英語力はかなり低いです。本来はかなりハイレベルな英語が求められる仕事ですが、所属している人達の英語力が低いため、実際にはハイレベルな英語力は求められないことも多いです。
具体的には以下をお読みください。
1 法務部員の英語力の現実
以下では、帰国子女等の英語にあまり問題のない人を除き、基本的にずっと日本で育った人を典型的法務部員として念頭に置きます。
法務部員の英語力は高くありません。
新卒で法務部に配属された人が英語が得意かというとそんなことはありません。
他の部署から配属されてきても、特に英語が得意になる要素はありません。
転職組で「英語使ってました!」とアピールして入ってきた人でも、これまた帰国子女等でもなければ大したことがありません。
誰もが出自からして英語があまり得意ではないのです。
では法務部に所属していればうまくなるか?
英文契約書を読んだり、海外とやりとりがあったりします。
これも恐ろしいほど大して上達しません。
ただ仕事を「英語嫌だなあ」と思いながらやってるだけだと上達ぶりも限られます。
大手企業であれば、会社の費用で部員を海外語学研修に派遣したりします。費用は全て会社持ち。数か月仕事は休める。そして、その間給料も出るという至れり尽くせるプランがあります。
これはひどいくらい効果の薄い制度で、金をドブに捨てるようなものです。
行っても英語力は大して上達しません。
これよりさらにレベルが上がると、海外ロースクールに行ったり、海外駐在などがあります。
海外に派遣されて1年以上海外にいた人の英語力が素晴らしいかというと、全くそんなことはありません。
その人の英語を使っているところを聞いただけでは「え、本当に海外に1年もいたの?」と思えるはずです。
会社、法務部は、部員の英語力を上げたいと思っていますが、なかなかうまくいきません。
長年継続して丹念に英語を身につける訓練が必要ですが、それをやっている人は少ないでしょう。
法務部員の多くは英語が嫌いなのです。
これが現実です。
なので、英語が苦手な人が法務部員の人数が多い企業に転職しようと思っているのであれば、例外的環境でない限り、安心してOKです。
実は外資系企業でも英語要否はまちまち。
外資系企業への転職は英語ができない人でも大丈夫な場合はけっこうあるはずです。
2 法務転職で英語力はどの程度必要か
実際のところ、法務の仕事で英語を使う場合、かなりのハイレベルな英語力が必要だと思います。
英文契約書を読むのに低い英語力で問題ないとは思えません。
私は以下のような業務経験がありますが、いずれも英語の面で楽だとは全く思えませんでした。
- 欧米でのグループ会社再編やベンチャー企業への出資
- アジアでの会社清算
周りの人のサポートを借りながら仕事をしましたが、英語で難しいことをやるのは大変です。
法律や契約を日本語でやるのも難しいですが、それを英語でやらないといけません。
なのでハイレベルな英語力が必要だと思っています。
では法務求人でそんなハイレベルな英語力が求められるかというと、そうはなりません。建前と現実の違いです。
法務部には、かなり英語のできる人がほしい。
しかし、現実にはそんないい人はいない。
したがって、多くの法務求人では「そこそこ以上できればいい」ということになります。
外資系企業法務部でレポート先が海外の法務統括の外国人だったりするとかなり高い英語力が求められる可能性がありますが、ポジションによりけりです。
多くの法務求人では実はたいした英語力は求められないと考えてもいいはずです。
法務は転職市場では恵まれた職種なのかな。
「3年以上の実務経験と
英語(TOEIC700点以上)があれば、
比較的求人は選べる市場」
とのこと。ハードルがかなり低い気がします。 https://t.co/lcrYJSerQ2
— にゃんがー@外資弁護士サラリーマン (@Nyanger_b) June 4, 2020
3 法務で英語の勉強は抜きんでる重要な手段
前述したことをまとめると、「法務部では高い英語力が求められるが、所属する法務部員の英語力は大したことがない」ということでした。
これは大いにチャンスがあるといえます。
英語力が高ければ法務部で抜きんでることができるということです。
法務部にいれば、海外の重要案件に関与することがありえます。
他の部よりも可能性は高いです。
その際に、上司は、英語力の低い人を担当させようとは思わないはずです。
英語力がそれなりにあれば、重要な案件に関与できるチャンスが高まります。
重要な案件に関与すれば、実績として残ります。
それは自分のトラックレコードになり、転職で威力を発揮するのです。
これこそが転職市場価値を高めるスキルアップです。
4 法務部員は英語力があれば転職・キャリアで大いにプラスになる
法務の求人情報を何年も見ていますが、英語は大切です。
外国人転職エージェントが英語で高い年収の法務ポジションを紹介してくれることもあります。
外資系企業に行くには英語が必要ですし、日系企業でも法務部員には英語を求めることがほとんどです。
法務部に英語は必要ですが、内部に十分な人材がいないため、外部に求めているのです。英語はアピールポイントになります。
もちろん、英語だけがすべてではなく、国内法務の力が必要とされる部署もあります。国内法務だけでも非常に多くの領域があり、英語が全てではありません。法務以外に身につけるべきものもたくさんあります。また、英語にばかり時間をかけていられないという人も多いはずです。
自分の考えや時間を考慮して、英語の要否を判断し、英語上達を図るかどうかを決めるのがよいと思います。英語をやれば時間はかかりますが、選択肢は広がりますよ。
コメント
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[…] 「法務求人で必要な英語力はどれくらいか 」で書いた通り、求められる英語力は職場によってかなり違います。 […]
[…] 「法務求人で必要な英語力はどれくらいか 」で書いた通り、求められる英語力は職場によってかなり違います。 […]