なぜ給料が安いのか。
答えは、会社員であれば、「給料が安いポジションに就いているから」です。
給料は直接的にはポジションで決まります。
流しそうめん台のどこにポジショニングするかでどれくらいそうめんが食べられるかが決まるのと同じです。
たくさんそうめんが食べたいなら、流しそうめんで取るべき最高の位置は?
できるだけ上流です。
そして、上流の方にいても放出されるそうめんの量が少なければ、あまり食べられません。
儲かっていない会社で部長になっても給料が安いのはそういうことです。
給料は、業界 × 会社 × 役職 × 職種の掛け合わせで決まります。
これを考えることこそが給料アップの戦略決定です。
実力とか経歴とか英語とか、市場価値とかは副次的要素です。後で考えましょう。
高い給料をもらいたいのであれば、まず考えるべきことは金に近いポジションかどうかです。
1 給料はポジションで決まる
ポジションは様々な要素で決まります。
ここでは、職種、役職、会社、業界に分けて説明します。
ポジションはこれらの掛け合わせで決まるのです。
小さい単位から見ていきましょう。
(1) 職種
経理とか営業とかです。
最近はIT系が人気で新卒で1000万円超というのもちょくちょく新聞に掲載されています。
職種によっては、ヒラであっても高給のポジションはあります。
具体例。ある著名外資系企業の20代のリーガルカウンセル(弁護士)は部下なしで2500万円くらいの給料をもらっていた、という同社経理の人の証言があります。
(2) 役職
会社内のランクの高低です。社長が一番高く、新卒底辺が一番安い。
流しそうめんの例でいえば、最上流が社長。新卒底辺が一番下の位置取り。
転職の時は職種だけでなく、役職も考えましょう。年収アップを狙うのであれば、転職の際に役職が上がる方がいいのです。
現職場では課長になるのに20年かかるけれども、10年勤続した後に他社に転職したら課長になれる、というのであれば大いに検討の余地ありです。
(3) 会社
これはわかりやすい。給料が高い会社か、そうでない会社か。
つまり、流しそうめんをするときに、たくさんそうめんが流されるそうめん台であるかそうでないかということです。
ひとくちに「経理課長」といっても、会社ごとに給料が全然違うということです。
たとえば、商社といっても三菱商事と零細商社では給料に雲泥の差がある。
また、一般的に外資系企業の方が高い給料を出す傾向にあります。
(4) 業界
これも大きなポイント。
18世紀のイギリスの経済学者、哲学者、倫理学者であるアダム・スミスは以下のように述べています。
どの社会、どの地域にも、労働の賃金と資本の利益には、業種ごとに相場になっている通常で平均的な水準がある。この相場は後に示すように、一つには社会全体の状況によって、つまり豊か貧しいか、発展しているのか停滞しているのかによって、もう一つにはそれぞれの業種の性格によって、自然に決まっている。
(アダム・スミス、山岡洋一訳『国富論 国の豊かさの本質と原因についての研究(上)』(日本経済新聞出版社、2007年3月)58ページ)
業種ごとに賃金相場は決まっているのです。
儲かっていない業界では、従業員にもうけが回ってこず、給料も構造的に安いままです。
儲かっていない業界というのは、どうやっても流しそうめんに回せるそうめんの量が少ないのです。
サービス・流通は業界の収益性が低く、社員の給料も上がりにくい。
他方で、金融、IT業界、コンサルの年収は高い傾向にあります。
儲かっていない業界は、「うう、全然そうめんを流せない。ごめん、みんな。。」となります。
他方で儲かっている業界は、「そうめんが今年も大量にあるから大盤振る舞いするぞ!」となる。
どちらの業界(流しそうめん台)で流しそうめんを食べる方がいいかは一目瞭然です。
儲かっている業界なら、一番下流に至ってお腹いっぱいそうめんにありつけます。
(5) 【具体例】会社に愚痴を言っても給料は上がらない
具体例を見てみましょう。業界を代表する有名企業の実例です。
企業によって従業員にもたらされる利益は違います。
赤字の部分を見てください。売上総利益÷従業員数の数値です。
従業員1人当たりの稼ぎ出した粗利を示しています。
石油業界は石油ジャブジャブで儲かりそうです。実際儲かっています。
出光興産。1人当たりの売上総利益はなんと5146万円。
三菱商事でも2485万円なので、その2倍以上です。
5146万円から1000万円の年収支払っても4000万円も余ります。
他方で、文房具会社のセーラー万年筆。1人当たりの売上総利益は657万円。
これでどう給料1000万円を支払うのか。
経営者からすれば、この会社の儲けでは従業員に高い給料を払いたくても払えないのです。
赤字になってすぐ潰れます。
こうした会社で「なんで給料が安いのか」と愚痴を言ってもどうしようもないのです。
現実を省みない無意味な文句です。
2 給料の高い/安い仕事
ポジション要素の掛け合わせパターンを見てみましょう。
(1) パターン1~5 ほぼ完ぺきな条件だが
これらのパターンは望ましい要素を兼ね備えています。
① パターン1:最強
儲かる業界×高年収企業×ハイポジション×花形職種
ゴールドマンサックスの社長みたいなのが具体例です。
調べたところ、ゴールドマンサックスの現CEOの報酬は2066万ドル。22億円くらいでしょうか。
ちなみにJPモルガンのCEOは5000万ドルほどです。
▼JPモルガンCEOのジェイミー・ダイモンの説く効率的会議術
② パターン2:儲からない業界だが高年収企業のハイポジション
業界×、その他全て〇
業界自体は儲からないけど、衰退産業の中で気を吐く高年収企業で高い地位にいる、というパターンです。
ユニクロ(ファーストリテイリング)とかでしょうか。
2018年8月期のファーストリテイリングの有価証券報告書によると、代表取締役の柳井さんの報酬は4億円です。
③ パターン3:儲かる業界でハイポジションなのに会社が負け組かケチ
会社×、その他全て〇
儲かる業界内の劣等生企業でハイポジションに就いた場合などが考えられます。
会社がダメだとなかなか給料は上がらないです。ただ、業界が高いと相場が高い以上高くなります。
④ パターン4:儲かる会社のヒラ
役職×、その他全て〇
JPモルガンの20代トレーダーでボーナス7000万円だった、とか聞いたことあります。
また、前述した外資系企業の20代のリーガルカウンセル(弁護士)の2500万円とかですね。
ランクが低くてももらえる可能性はあります。
かなりレアケースです。
⑤ パターン5:職種がダメなら全滅
職種×、その他全て〇
超儲かる企業で花形には程遠い職種だと、給料増は期待できなさそうです。
一般職だと給料は安い。
(2) パターン12~15 1点突破!
パターン16は最悪ですが、パターン12~15も、いい要素が1つしかないというよくないパターンです。
⑫ パターン12:宮本武蔵が戦場に兵士として参戦しても
職種は〇、その他全て×
どんな儲かる花形職種でも、冴えない業種、儲かっていない会社、低いポジションではさすがに高い給料は望めません。
⑬ パターン13:所詮はお山の大将
役職は〇、その他全て×
儲からない業界の中でも冴えない企業。その中で高い地位に就いたらどうか。
そんなに高い給料は望めません。
「部長」や「役員」でも給料が全然低い人はいっぱいいます。
⑭ パターン14:会社は気を吐いている
会社は〇、その他全て×
業界はイマイチだが、その中でがんばっている会社であれば、ヒラであってもそこそこの給料をもらえる可能性があります。
しかしそれほど期待はできなさそうです。
⑮ パターン15:周りは儲かっているのに
業界は〇、その他全て×
業界の中で取り残された企業のヒラ。ちょっと厳しいですね。
3 年収を上げたいなら業界、会社、役職、職種の組み合わせを考えよ
年収を上げたい。
業界、会社、役職、職種の4要素のどれをどう変えるか。
たとえば、今の職場で出世するのは役職を上げるということです。
今の職場で他の職種にチェンジすることもありえます。
現職場の「会社」「業界」がよければ、これを転職で捨てていいのか考える必要があります。役職を上げていくことを狙った方がいいかもしれません。
今の会社の「業界」がイマイチなら、出世しても給料がそれほど上がらないのは社内を見ていればわかります。
年収アップには、業界を変えるのが一番手っ取り早いです。アダム・スミスのアドバイスです。
すなわち、流しそうめんをたくさん食べたいなら、そうめんをたくさん流してくれる台に移るべきです。
そうめんが全然流れてこない台で、下流からちょっと上流にいってもそれほど多くはありつけませんし、人がたくさんいたら上流に移動するのは難しいのです。
高い給料がほしい、と思うなら、まずはこうした直接的な要素を考えるべきです。
4 実力や経歴は年収の説明には回りくどい
よく言われる以下の要素は間接的なものです。
- 実力
- 能力
- 地頭
- 魅力
- 学歴
- 英語
- 経験
これらはこのように言われます。
- 実力をつければ年収が上がる
- 能力があれば高い年収を望める
- 人望があれば上に行ける
- 学歴は偉くなるのに重要だ
- 英語ができると高年収にありつける
- いい経験を積み重ねることが大事だ
さらに細かいとこんな「年収1000万円到達のために私がやったこと」みたいなアドバイスもあります。
- メールは即レス
- 誰よりも早く出社
- 誰にでも挨拶
- 社内規程をチェック
- 筋トレ
- 根回しをしっかり
これらの要因は年収アップと因果関係が乏しいです。
ポジションを考える前にこうした要素を考えるのは年収の説明においては回りくどい間接的な説明です。
どれくらい間接的か?
たとえば、「明日雨降るかな?」
関東でこのように他の人から聞かれる。
これに対して以下のように答えるようなものです。
- 「西日本は今日雨降ってるよ」
- 「今は梅雨の季節だからね」
- 「傘持ってる人をよく見かけたよ」
上記のように答えず、直接的にこう答えればいいのです。
「天気予報で明日は雨予報で降水確率80%だよ」
会社員が高い給料がもらえるかどうかは、”実力”があるかどうかではなく、高い給料がもらえるポジションにいるかどうかできまります。
どの池に飛び込むべきかはどれくらいうまく泳げるかより重要です。
ーウォーレン・バフェット
(what pond you jumped in was probably more important than how well you could swim.)
Afternoon Session – 1997 Berkshire Hathaway Annual Meeting (cnbc.com)
5 シンプルに考えるのが年収アップへの第一歩
会社員なら、年収アップするには?と考えたら「どう給料の高いポジションに就くか?」を考えなければいけません。
年収アップの方法として、挨拶をしっかりするとか、外見に気を付けるとか、専門性を磨くとか、英語力を付けるとかは、間接的な答えです。
自分の今の状況を考慮して、現職場で給料アップを狙うのか、転職して狙うのかを考えるのです。
現職場で狙う場合に必要なものは何か?転職で給料増を狙う場合に必要なものは何か?
より給料の高い業界、業界内の給料の高い企業、上位の役職、他の職種はどうなのか、その掛け合わせはどうすべきかについて思考を巡らせるのです。
手に入れるべき要素を決めてからそこで初めて「英語が必要」とか、社内人脈作りが必要、とかになってきます。
社内人脈を作るために、飲み会で偉い人にゴマをするべきだ、とかどんどん細かい戦術を考えていきます。
大きな枠組みからスタートすれば方向性を外しません。
「年収アップに英語が必要だ!」からスタートして、自分の年収アッププランに英語が全く必要ないのであれば、それは壮大な勘違いであり、人生の貴重な時間を無駄にします。
まずシンプルに直接的に問いに答える必要があります。
高い給料をもらうには、給料の高いポジションに就く。
どの要素のあるポジションを狙うのか。
これらを考えてから派生的に個別の事柄を考えるべきです。
社内で出世する方が早いなら転職よりも出世優先です。
それが難しいなら転職を考えるべきです。
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