弁護士よ、カリフォルニア州司法試験合格を目指せ

2024年5月20日2024年11月16日

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アメリカのロースクールに留学して、アメリカの弁護士資格を取る。

割合は少数ですが、少なくない弁護士がこのルートをたどっています。

このルートに魅力を感じつつも、実践できない人も多いはずです。

何より留学が辛い。何か月も仕事を中断して現地に住まないといけません。

「仕事が休めてうれしい！」と感じる、というか休むことを目的にしている弁護士も多そうです。

しかし、そうでない人にとって留学にかかる時間と費用は大きなネックです。

よく聞くメジャーなニューヨーク州司法試験と異なり、カリフォルニア州司法試験は、なんと日本の弁護士であればアメリカのロースクールを卒業せずともいきなり受験できます。

問題は、カリフォルニア州司法試験は難関で知られているということとです。

カリフォルニア州司法試験の魅力

日本の弁護士がなぜカリフォルニア州司法試験を目指すとよいのか。

(1)　箔が付く、ブランド

「アメリカの弁護士資格も持ってる。すごい！」と思ってもらえる可能性があるということです。

知っている人に対しては、「ニューヨークではなく、難関のカリフォルニアですって？！」と思ってもらえます。

ア　法律事務所の弁護士のブランド力アップ

法律事務所の弁護士なら、アメリカの弁護士資格を持っていれば、顧客から、

「英語案件できそう」
「海外案件強そう」

と勘違いしてもらえます。

勘違いしてもらって高いフィーを請求できる可能性があがります。

イ　組織内弁護士もブランド力アップ

組織内弁護士であれば、日本弁護士だけよりもさらに強そうに見えます。

私が法律事務所で働いていたころ、顧客との会議で名刺交換した際、顧客担当法務の1人の名刺に「ニューヨーク州弁護士」と書かれていました。

会議後、同じ法律事務所の兄弁と「ニューヨーク州弁護士」と書いてあると強力だな、と話しました。

(2)　転職しやすくなる

外資系企業への転職に当たっては、アメリカの弁護士資格があった方が有利です。外国人にとっては極東の日本の弁護士資格よりもアメリカのカリフォルニア州弁護士資格の方が信頼できる。

特にアメリカ人にとっては。

外資系企業では、ニューヨーク州とかアメリカの弁護士資格だけ持って日本法人の法務部長とかけっこういますが、アメリカ人の無知と思い込みを物語っています。

アメリカの資格を持ってても日本の法律の知識の証明には全くなりませんが、そうは思われていないようです。

したがって、日本の弁護士資格だけでなく、カリフォルニア州等の資格も持っていれば、より転職できる先が増えるということです。

そして残念なことに、アメリカ至上主義的ないかにも外資な会社の方が年収は高めな感じがします。

(3)　外国人とのコミュニケーション力アップ

外国人の法務の人とやりとりする際に、日本以外の国の法律を知っていれば、会話の幅が広がります。

カリフォルニア州司法試験の受験資格

日本の弁護士資格を持っているかどうかで留学要否が異なります。

(1)　日本の弁護士資格を持っている場合

日本の弁護士であれば、カリフォルニア州の司法試験を受験することができます。

If you are a qualified lawyer in your home jurisdiction, you can sit for the California Bar Exam. You still have some other requirements to fulfill, but your foreign license is a shortcut in the application process.
U.S. bar exam foreign eligibility and requirements | BARBRI

アメリカのロースクールを修了していなくてもよく、法学部卒業でなくても大丈夫です。

ニューヨーク州とは違います。

(2)　日本の弁護士資格を持っていない場合

法学の学位を持っているが弁護士資格がない場合、ABA(米国弁護士協会)またはカリフォルニア州の認定を受けた学校で最低20単位のLL.M.(法学修士)を修了しなければなりません

If you have a law degree but are not licensed, you may qualify to sit for the bar if you complete an LL.M. with at least 20 credits at an ABA or California accredited school.
U.S. bar exam foreign eligibility and requirements | BARBRI

カリフォルニア州司法試験の日程と試験形式

試験は年2回実施されます。2月と7月。

2024年7月の試験日程

年月日	イベント
2024年3月1日	申込開始 Exam application open
2024年4月2日	申込期限 Timely filing deadline
2024年4月3日～30日	50ドル増額　$50 late filing fee
2024年5月1日～6月3日	250ドル増額　$250 late filing fee
2024年6月3日	最終申込期限 Final filing/reinstatement deadline
2024年7月16日	受験資格提出期限
2024年7月30日、31日	本試験
2024年11月8日	合格発表

試験日程

合格発表の日程

本試験の2日間のスケジュール

カリフォルニア州司法試験の試験についての公式ウェブサイトの説明です。

Format
The written portion of the exam (essay questions and Performance Test) is typically administered on the first day, with three essay questions given in the morning session and two essay questions plus the Performance Test given in the afternoon session. The MBE is typically administered on the second day, with 100 questions given in the morning and 100 questions given in the afternoon.

www.calbar.ca.gov
(Scope of the California Bar Examination)

1日目：筆記試験（essay questions と Performance Test）

午前　3時間　　エッセイ3問（60分×3）
午後　4時間半　エッセイ2問（60分×2）＋パフォーマンステスト（90分）

エッセイは1時間のものが5問です（Five one-hour essay questions）。

午前と午後に分かれています。

パフォーマンステストは、1問だけ90分です（One 90-minute Performance Test）。

午前の3時間3問は、特に休みなくぶっ続けで実施されます。

Essays 1–3 will be administered together without breaks during the morning
session of Day 1
July-2024-Bar-Exam-FAQs.pdf (ca.gov)

昼休みの後、午後4時間半も休みなくぶっ続けで実施されます。

after a lunch break, applicants will return for Essays 4, 5, and the Performance Test, which will be administered together without breaks during the afternoon session of Day 1
July-2024-Bar-Exam-FAQs.pdf (ca.gov)

筆記試験の過去問
Past Exams (ca.gov)

2日目：Multistate Bar Examination (MBE)

MBEは、選択式問題（multiple-choice questions）です。

6時間で200問。

午前と午後の2セッションあります。

午前　3時間　100問
午後　3時間　100問

Multistate Bar Examination (MBE)
The MBE is developed and typically graded by the National Conference of Bar Examiners (NCBE). This portion of the General Bar Examination is an objective six-hour examination containing 200 questions, divided into two, three-hour sessions during which 100 questions are administered. The MBE tests seven subjects: Civil Procedure, Constitutional Law, Contracts, Criminal Law and Procedure, Evidence, Real Property, and Torts.
(Scope of the California Bar Examination)

後述しますが、MBEの試験科目は以下7科目です。

Civil Procedure
Constitutional Law
Contracts
Criminal Law and Procedure
Evidence
Real Property
Torts

カリフォルニア州司法試験の本試験の配布物と持ち込める物

(1)　配布物

試験問題の紙冊子
メモ用紙（Scratch paper）

Applicants will receive the questions in a paper booklet and will be given scratch paper to use if they need.
July-2024-Bar-Exam-FAQs.pdf (ca.gov)

(2)　持ち込める物

水のボトル

Applicants will be allowed access to water during the exam. Please note that water fountains may not be available at all test sites. Test takers can bring one filled water bottle into the testing center. It must be a clear, plastic container with a lid, no larger than 32 ounces. It must have no labels or writing. To reduce the chance of accidental spillage, store water bottles on the floor away from exam materials.
July-2024-Bar-Exam-FAQs.pdf (ca.gov)

カリフォルニア州司法試験の試験科目（Topict）

カリフォルニア州司法試験の試験科目は、筆記試験とMBEでそれぞれ以下のとおりです。

Applicants taking the California Bar Exam may be required to answer questions involving issues from all of the subjects listed below:
Scope of the California Bar Examination

試験科目	筆記試験	MBE
Business Associations	✅
Civil Procedure	✅	✅
Community Property	✅
Constitutional Law	✅	✅
Contracts	✅	✅
Criminal Law and Procedure	✅	✅
Evidence	✅	✅
Professional Responsibility	✅
Real Property	✅	✅
Remedies	✅
Torts	✅	✅
Trusts	✅
Wills and Succession	✅

(1)　各科目について

公式ウェブサイトによる試験科目の説明は以下のとおりです。

全科目の説明をしてくれてないのはなぜなんでしょう。

Scope of the California Bar Examination

試験科目	筆記試験	MBE
Business Associations	✅		受験者は、株式会社、個人事業主、パートナーシップ(普通組合、有限責任組合、有限責任事業組合)、合弁事業、有限責任会社など、さまざまな企業形態に関する問題に加え、取引関係に内在する代理の原理についての問題にも答えられるよう準備しておく必要があります。ただし、これらに限定されるものではありません。
Civil Procedure	✅	✅	受験者は、連邦民事訴訟規則およびカリフォルニア州民事訴訟法に関する問題に答えられるよう準備しておく必要があります。特に、連邦規則に具体的な対応規定がないカリフォルニア州の訴状作成と訴訟実務の手続きについて、連邦規則とカリフォルニア州規則の違いを説明できるよう心がけましょう。
Community Property	✅
Constitutional Law	✅	✅
Contracts	✅	✅
Criminal Law and Procedure	✅	✅
Evidence	✅	✅	受験者は、連邦証拠規則およびカリフォルニア州証拠法典に関する問題に答えられるよう準備しておく必要があります。特に、カリフォルニア州の証拠規則に連邦規則の具体的な対応規定がない場合は、両者の違いを比較対照できるよう心がけましょう。
Professional Responsibility	✅		受験者は、カリフォルニア州職業倫理規定、関連するカリフォルニア州事業専門職業法の条項、この分野の主要な連邦および州の判例法に加えて、ABA職業倫理モデル規則およびABAモデル職業責任規程についての知識を問う問題に答えられるよう準備しておく必要があります。職業倫理の問題は、試験で出題されるあらゆる科目に関連して出題される可能性があります。
Real Property	✅	✅
Remedies	✅
Torts	✅	✅
Trusts	✅
Wills and Succession	✅		受験者は、以下のカリフォルニア州遺産法典の規定に精通し、記載された特定の分野におけるカリフォルニア州法を理解しておく必要があります。

(2)　MBEは7科目

The MBE tests seven subjects: Civil Procedure, Constitutional Law, Contracts, Criminal Law and Procedure, Evidence, Real Property, and Torts.
Scope of the California Bar Examination

(3)　試験科目ごとの出題頻度と重要度

試験科目	筆記試験	MBE	出題頻度・重要度
Business Associations	✅		C
Civil Procedure	✅	✅	C
Community Property	✅		A
Constitutional Law	✅	✅	D
Contracts	✅	✅	B
Criminal Law and Procedure	✅	✅	C
Evidence	✅	✅	C
Professional Responsibility	✅		S
Real Property	✅	✅	D
Remedies	✅		B
Torts	✅	✅	D
Trusts	✅		E
Wills and Succession	✅		E

2023年最新版カリフォルニア州司法試験論文科目出題傾向シート/CalBar_EssayTendency Note（カリフォルニア司法試験に独学で黙々と挑戦する会 @calbarfromjapanより）より作成

カリフォルニア州司法試験合格のための学習教材（有料教材）

業者	媒体	筆記・MBE		値段
BARBRI	予備校	両方		$5,999
BarMax	予備校	両方		$1,895
Smart Bar Prep	PDF	両方	Standard	$124
			Deluxe	$199
			Ultimate	$275
			Pro	$449
AdaptiBar Bar Prep Supplement	Web/アプリ	MBE	MBE Simulator	$395
	動画	MBE	Video Lectures	$395
Strategies & Tactics for the MBE: Multistate Bar Exam (Emanuel Bar Review)（第8版、2023年1月）	書籍	MBE		\17,662
Strategies & Tactics for the MBE: Multistate Bar Exam (The Bar Review, 2)（第4版、2023年4月）	書籍	MBE		\12,290
MBE Decoded: Multistate Bar Exam（初版、2021年4月）	書籍	MBE	インプットメインの内容	\15.300
Essay Exam Writing for the California Bar Exam	書籍	筆記		$99

カリフォルニア州司法試験対策予備校

BarBri

米国司法試験対策の王道として知られるBARBRIは、50年以上の歴史と最高水準の合格実績を持ちます。

講師陣は元司法試験考査委員や有名ロースクール教授が中心で、教材の質には定評があります。

指摘される弱点は、近年は革新性で他校に後れを取っているということです。

教材の質は高いものの、学習量が過密、価格が約3,000ドルと高額、講義スタイルがやや古いといった問題を指摘されています。

教材だけ買って講義は受けない、というスタイルで勉強するならBarBriがおすすめ。

Kaplan Bar Review

Studicata – 視覚的学習に特化した革新的予備校

動画講義に特化した予備校で、視覚的な学習者に最適です。

創設者のMichael氏による分かりやすい講義は、複雑な法律概念を記憶に残りやすい形で解説します。

過去問も豊富で、実践的な試験対策が可能です。

Quimbee – 視覚的学習に特化した新世代予備校

アニメーションや図解を多用した独自の解説動画が特徴です。

特に視覚的な学習を好む学生から高い支持を得ています。

MBEの問題解説が秀逸で、複雑な法的概念を分かりやすく整理してくれます。

Themis Bar Review – コストパフォーマンスに優れた新興勢力

大手予備校より2割程度安い授業料で、質の高い講義を提供します。
オンラインを中心としたフレキシブルな学習システムは、特に社会人受験生から支持を集めています。

AdaptiBar – MBE対策のスペシャリスト

MBE（短答式試験）に特化した予備校として、独自のAI解析システムを提供します。
過去問演習に重点を置き、出題傾向を徹底的に分析した教材は、他の予備校との併用にも適しています。

BarMax – モバイルファーストの革新的アプローチ

スマートフォンでの学習に最適化された教材と、生涯アクセス可能なプラットフォームが特徴です。
合格するまで何度でも利用できる点が、リスクヘッジの観点から評価されています。
通勤時間や隙間時間を活用した学習が可能で、仕事と両立させやすい設計になっています。

参考にした情報源

予備校にお金をかけない場合

フルのBar Reviewコースを買うつもりはない、という人は、本だけ購入して（Amazonとかで中古も売っています）自力で勉強することも可能です。Barbriの本を購入する場合は、Mini Review + MBE Questions + Essay Questions + PT Questionsを入手し、必要に応じて日本人ノートを参照しながら勉強する感じになるのかな、と思います。MBE Questionsの本は買わずに、MBEの演習はAdaptibarを使うのも良さそうです。アウトラインを自分で読み込んで勉強する根気のある方向けです（私は無理だったので、講義ビデオのあるフルのBar Reviewコースにしました…）。この方法ならかなり安く済むと思います。
カリフォルニア州司法試験#5_勉強期間と使った教材｜うに弁護士 (note.com)

カリフォルニア州司法試験合格のための無料教材（Youtube）

	媒体	種類	リンク
JD Advising – YouTube	YouTube	試験について	California Bar Exam – YouTube
	YouTube	一般	Bar Exam Primer Course – YouTube
	YouTube	筆記試験	CA Bar Exam Essay Guide – YouTube
	Youtube	MBE	Multistate Bar Exam (MBE) – YouTube
	YouTube	MBE	2-minute MBE Questions – YouTube
CA BAR EXAM LECTURES – YouTube	Youtube	全般	様々なYouTube動画教材をミックスしたもの。
Beverly Hills Bar Association	Youtube	勉強法	How to Pass the California Bar Exam: A Simple Game Plan (youtube.com)

カリフォルニア州司法試験の試験会場

コロナの時は外国からウェブ受験ができました。

今はカリフォルニア州内に複数ある試験会場に赴かなければいけません。

Testing Locations: July 2024 Bar Exam

チャーリー・マンガーのファンとしてはパサデナがいいですね。

リンク集：カリフォルニア州司法試験

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