転職は日本でも受け入れられるようになってきた、というのような論調を見かけます。
転職はキャリア形成に非常に有益な手段です。
しかし、転職回数が多すぎるのは良くありません。
なぜかと言えば、頻繫に職場を変えることをよく思わない人が多いからです。
また、「今の仕事が嫌だから転職する」「天職は他にある」という安易な転職は危険であり、損をします。
1 ありもしない天職・適職を追い求める病に付ける薬はない
「こんなはずじゃなかった」と新しい職場で不満を持つ。
転職が多いと、何度もこうしたリスクに直面することになります。
転職に際しての最大のリスクは何だろうか?それは、次に行う仕事の内容が自分の想像していたものと大きく異なることだと思う。
(山崎元『一生、同じ会社で働きますか?』(文響社、2017年4月)72ページ)
『一生、同じ会社で働きますか?』の著者の山崎さんは12回転職した正真正銘のジョブホッパーであり、その言葉を噛み締めるべきです。
転職して新天地に行くのは、常にこの山崎さんの指摘する「最大のリスク」を抱えているのです。
リスクをとる人は、たいていは自分が失敗する確率を過小評価しており、猪突猛進した末に、本当の確率を思い知ることになる。リスクを読みちがえているせいで、実際には慎重とは無縁であるにもかかわらず、ちゃんと注意を払ったと思い込む。
(ダニエル・カーネマン『ファスト&スロー (下)』(早川書房、2012年11月)40ページ)
転職者は、新職場に大いに期待します。この自分で勝手に思い描く期待が裏切られることが転職の「失敗」と感じる大きな原因です。
転職先はいいかもしれないが、悪いかもしれない。うまくいく確率の方が高いかどうかなんてわからないのに、注意を払らわず、楽観視して失敗する。転職は人の性質に沿った間違い・失敗が起こりやすいことには気を付けねばなりません。
仕事で得られるはずもないものをやたら求めるのは危険です。
2 多すぎる転職回数は履歴書を台無しにする
採用する側は、応募者がすぐ辞めないか気にします。
多くの場合、転職回数が多いのは不利です。採用者を心配させます。
- これだけ採用に手間をかけてすぐ辞められたら困る。また採用活動やらないといけない。
- すぐ退職したら転職エージェントの費用や受け入れ費用がパーになる
- それならば、ちょっとやそっとのことで辞めそうにない人を取ろう
- では、履歴書を見てみよう。どれどれ。Aさんは前の会社を1年で辞めてる!これは危ない。
このように考えるのは当然すぎるといえます。
1社を短期間で辞めるくらいなら言い訳も立ちますが、短期間で複数の会社を渡り歩けば怪しまれて当然です。
ある転職エージェントはジョブホッパーについて「転職回数が多くなりすぎて助けようにもどうにもできなくなっている人がいる」と語っていました。
転職コンサルタントの和多田さんもジョブホッパーを「転職が難しい人」のグループに含めています。
私は独立のコンサルタントとして、優良で転職コンサルティングを行っています。平たく言えば、自力や無料サポートでは転職が難しい方が、より強力なサポートを求めて受講してくるのです。
(和多田保『ブランディング転職術 (「自分」というオンリーワンの商品を高く売ろう!)』(スダンダーズ・プレス、2019年6月)14ページ)
具体的には、中高年、ジョブホッパー、零細企業退職者、自営業者、リストラ退職者などが大半を占めます。
ジョブホッパーは、一般的に以下の人達と同じくらい転職が難しいということです。
- 中高年
- 零細企業退職者
- 自営業者
- リストラ退職者
転職を使ってキャリアをうまく構築していこうという人は、かえって転職には慎重になるべきなのです。
3 転職は金銭的損失を伴う
転職でちょっとやそっと給料が上がったくらいでは、かえって損をする可能性があります。
ほとんど企業の年金や退職金の制度を考えると、年収がそこそこ以上に上がるのでなければ、金銭的な損得上は転職が損になることが多い。
山崎元『一生、同じ会社で働きますか?』(文響社、2017年4月)24ページ
一般的に退職金は勤続年数に応じて金額が増える制度になっていることが多いため、1社で30年勤務した方が30社で1年ずつ勤務するよりも多額になるのです。
また、退職金は税金の優遇があるので、給料は月給でもらうより退職金でもらう方が得です。
他にも転職すると以下のような出費が発生する可能性があります。
- 転職先の住居手当が不十分
- 引っ越し費用の発生
- 転職先は経費が厳しい
転職は大変なのです。
4 転職先でも対人関係を含む仕事ストレスが待ち構えている
転職しようとして他の企業から内定をもらった。
その採用企業は、なぜその人を採用することにしたか?
もちろん、働いてもらうためです。
転職するとなれば現職は辞めることができて、辞めたい人にはハッピーです。
現職が極めてストレスフルであれば、退職は本当に特効薬。
一気にストレスがなくなります。
しかし、転職先でも当然仕事が待ち構えています。
そして、そこには新しい同僚がいます。
新しい仕事を覚え、新しい対人関係を築かなければいけません。
組織内で仕事をするにあたり、対人関係の重要性は多くの人が身に染みているでしょう。
多くの場合、転職をすれば、ある組織内で働く人間関係で過去築いてきたものはゼロになります。
また初めからやり直しになります。
新しい職場の同僚は、中途入社の人を温かく見守ってくれる人ばかりではありません。
「転校生は緊張してるからやさしく接してあげよう」という生徒だらけの学校なんてあるわけがありません。
それと同じで、会社でも中途入社の人に対しては「お手前拝見といこうか」と思っている人の方が多数派です。
そんな中に入るのはそれほど愉快なことではありません。
5 転職するのによく考えて損はない
転職は重要イベントであり、生活を大きく変えます。
軽率に考えるのはよくありません。
考えるのが嫌で「直感だけで決める」というのはサボっているのと同じです。
自分の直感を信じる
響きはかっこいいですが、言い換えれば
「自分の偏見だけに頼って熟慮を放棄した意思決定」
となりそう。「予測不能な状況で直感が正しいと主張するのは、よくて自己欺瞞」
「直感の「的中」は幸運によるものであり、でなければ嘘」
*カーネマン『ファスト&スロー』より
— にゃんがー@外資弁護士サラリーマン (@Nyanger_b) 2020年1月3日
私は、転職するならばたくさんの転職エージェントに会い、多くの求人情報を見て、よく考えて転職を決めます。
よく考えたことで後悔なく転職できます。「本当に行きたいと思えるポジション」だけに絞るからです。
安易な転職には注意です。
転職エージェントの言うことにはすぐ乗っかかって応募しないようにしましょう。
複数の転職エージェントと相談して熟慮することが本当に大事です。
転職エージェントと無理に相談しなくても問題ありません。
時間をかけて考えるのが大事です。
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