転職面接で面接官から「なぜ現職を辞めるのですか?」「当社を志望する理由は何ですか?」と聞かれたらどう答えるべきか。
どう答えるのがベストなのかから回答の仕方を本記事で解説します。
転職面接突破率を上げるテクニックを紹介します。
手っ取り早く結論を知りたい人は後記2から読むのをおすすめします。
1 転職理由・志望理由
転職理由と志望理由は厳密に分けると恐らく別物です。
転職理由は、転職する理由、つまり職を変える理由を問うものですので、「なぜ現職を辞めるのか」というのが質問したいことです。
志望理由は、その応募先を転職先として希望する理由です。ホンダや日産もあるのになぜトヨタなのかということです。
2 転職理由の伝え方
転職理由は多くの人は「今の職場が嫌だから」と考えるでしょう。
しかしこれは面接官の印象がよろしくありません。
無理してでもポジティブに言い換えるしかありません。
しかし「キャリアアップしたい」とか「成長したい」だと抽象的すぎ、空虚すぎます。
そこで、より具体的に答えるため、志望理由と混ぜて答えましょう。
転職理由の回答例:
面接官:なぜ転職を希望されているのですか?
応募者:現職場よりも将来のキャリアアップにつながるポジションがあれば、ぜひお話をお聞きしたいと考えており、御社で働くことはキャリアアップにつながると考えたからです。
上記のとおり答えて「御社で働くことはキャリアアップにつながると考えた」理由を述べます。つまり、志望理由につなげます。
「現職場よりも将来のキャリアアップにつながるポジションがあれば」というのは、別に今の職場が嫌なわけでははく、それより良いものがあれば転職するということを言っています。
これは当たり前のことです。転職先>現職場であれば、合理的な人間は100%転職します。
当たり前のことを言えばおかしいと指摘されるはずはありません。
「現職場よりも将来のキャリアアップにつながるポジションがあれば、ぜひお話をお聞きしたい」と述べているのは、すぐに転職する短絡的な人でないことを示すためです。
「現職場よりも将来のキャリアアップにつながるポジションがあれば、ぜひ転職したい」と言ってしまうと、転職先>現職場と判断すればすぐ転職する節操のない奴だと思われてしまうかもしれません。
また、面接時点では転職が決まっているわけではありません。なので「話を聞きたい」と答え、早とちりと思われるのを防止します。
転職理由を聞かれて、現職場のことだけを伝えれば、どうしてもネガティブ要素がメインになりがちです。
そこで、「現職場より転職先がよければ」と、現職場だけでなく転職先を登場させて、転職先のポジティブサイドを伝えることにします。こうすれば回答案の内容がポジティブになりますよね。
以下のように答えるイメージです。
Aさん「どうして今ファストフードの店に入って注文しないですぐ出たんですか?」
×ネガティブ「まずそうだったから」
〇ポジティブ「すぐ隣においしい別のファストフード店があるのが見えたから」
転職理由を聞かれたら、志望理由と混ぜてポジティブに答えましょう。
そうすれば、自然と志望理由を述べる流れになります。
3 志望理由は採用者が求めているものを答える(完璧志望理由)
志望理由には、「完璧な志望理由」が存在します。
どういうことかというと、転職面接を突破するために一番有効な答え方があるということです。
そんなパーフェクト志望理由は、採用者の求める人材が持っているものを答えることです。
大事なのでもう一度言います。
志望理由は、採用者の視点に立って、採用者の求めているものを回答するのが一番ポイントが高い。
応募者自身の本音を言ってもかまいませんが、採用者の期待にかすりもしない自己中な志望理由を述べれば面接突破率は下がります。
そうではなく、採用者の求人理由を知り、その「求人理由に合致するものを私は提供できますよ」「御社と私には今回の求人募集において重要な部分が共通していますよ(御社の求人理由と私の志望理由が一緒ですよ)」と伝えるのです。
そんなパーフェクト志望理由とはどんなものか。次の具体例を見てみましょう。
4 志望理由の伝え方の例文
応募者:M&A関連業務に興味があり、この分野で私の経験を活かしたいと思い御社を志望しております。
これが志望理由の具体例です。
大したことは言っていません。
ポイントは、採用者に合わせるということです。
なぜこの応募者は「M&A」と言ったのか?
それは、この求人は「M&A業務を扱うM&A人材」を募集していたからです。
それを知り、自分の経験の中から使える部分を探して答えています。
他にはこんな感じ。
応募者:より大きなチームを率いて会社に影響を与えられるようになりたいからです。
これは若干抽象的ですが、管理職のポジションに応募する場合です。
今は1人部下の職場だけど、転職先には3人部下となるポジションの場合などです。
部下数だけだと志望理由としては弱いので、他の志望理由とセットで答えないといけないでしょう。
志望理由は、複数の志望理由を言うのでかまいません。むしろそっちの方がいい。
採用者も複数の要素を持った人を採用したがっています。
そして、「これらの志望理由に全て合致するのは御社しかありません」と言うと効果的です。
5 完璧志望理由の作り方
完璧な志望理由を作るにはどうしたらいいでしょうか。
(1) 完璧な志望理由は相手に合わせて作り出すものであると理解する
マインドセットを正しく設定しましょう。
「志望理由は何ですか?」と聞かれて、自分の思っていることをそのまま伝えようとしてはいけません。
ゴールからの逆算思考を持つべきです。
ゴールとは?転職面接のゴールは、内定です。
内定を得るには、採用決定者からOKをもらわないといかません。
つまり、採用決定者に合わせる必要があるのです。
採用決定者の意向を全く考えずに自分の志望理由を言うのは、「パーフェクト志望理由」に比べると著しく成功率の低い志望理由になってしまいます。
たとえるならば、バッターがピッチャーのことを考えずに自分の好きなようにバットを振るのと同じです。
以下バッターAとバッターB、どちらが打てそうですか?
バッターA:「これまでずっとカーブを打つ練習をしてきた。このピッチャーがカーブを投げるのかは知らないが、自分の練習の集大成を、次のボールがカーブが来ると信じて思い切り振るだけだ!」
バッターB:現在のカウント、ランナーの状況、点差、回、ピッチャーの疲れ具合、ピッチャーの球種、過去のピッチャーの配球などから推測して、投げてきそうな球種を絞り込んでそれを狙う。
バッターAは、ただの当てずっぽうです。
もしピッチャーがそもそもカーブを投げないピッチャーであった場合、Aが成功する可能性は絶望的です。
自分の振りたいように振るのではなく、相手に合わせて振る。
転職面接でも、自分の言いたいことを言うのではなく、相手に合わせた志望理由を言う。
これが必勝の志望理由の型・テンプレートです。
(2) 採用者が欲しいものを知る
これが一番大事かもしれません。
自分のことではなく、他人が考えていることなのでわからない。
情報を集めたうえで推測するしかありません。
情報を集めるのは、面接前と面接中があります。
ア 面接前の情報収集
面接前の情報収集がスーパー重要です。
面接中に重要情報を取得してそれに対応した理由をその場で作り上げるのは難しい。
そうなると面接前に採用者の希望を知っておかねばなりません。
情報収集先は、一番ベースになるのが求人票・Job Descriptionです。
「こんな人材が欲しい」とあれこれ書いてあります。
ただ、求人票はけっこう抽象的に書いてあるので、具体化させる必要があります。
その際に役に立つのが転職エージェントです。その求人情報を持ってきた転職エージェントに質問しましょう。
転職エージェントが質問に答えないだけばかりか、「それは面接で聞いてください」と言ってきたら、その転職エージェントはダメエージェントですので、できたら使うのを避けて別のエージェントに頼りましょう。
求人票、転職エージェントだけでなく、会社ウェブサイトや有価証券報告書等のIR資料でどのような会社なのかも情報を集めるべきです。
イ 面接中の情報収集
基本的には必要な情報収集はできる限り面接前にしておくべきです。
しかし面接前にできる情報収集には限界があります。
聞かないとわからない質問もある。
それは面接で聞きましょう。
「できる限り調べたけど事前調査ではわからず、面接でぜひ聞きたい質問」を用意しておきましょう。
この質問はすごくポイントが高くなること間違いありません。
どうポイントが高いかというと、面接官が応募者に好印象を抱いてくれるのが期待できるのです。
きちんと会社について調べてきたことのアピールにもなります。
質問は超重要ですからね。
(3) 採用者の希望に合致するような志望動機を自分が持っているか
主に面接前の段階で「採用者が求めているもの」が判明したら、次は相手ではなく、自分のサイドを考えましょう。
「採用者が求めているもの」に合致するような志望理由を自分は持っているのでしょうか。
採用者が「契約書レビュー」をする人材を求めている。自分は契約書レビューの経験がある。契約書を読むのは好きではないが「自分の多種多様な契約書レビューの経験を活かせる場を希望しています」という志望理由にすれば、相手の求めているものに合致した志望理由を作り上げることができます。
相手が欲しているものは複数あるので、それに合う自分の志望理由を作り上げていきます。
ここでこの方法には問題点があるように思います。
相手である採用者が求めているものを自分が持っていなかったらどうするか?たとえば経験がない場合。
採用者が「採用関係の経験」を求めている。これはかなり重要な要求事項である。
でも自分は採用関係の経験はない。
その場合は関連する経験がある、これからやっていきたい等でそれっぽく言う。
「採用に直接携わった経験はありません。しかし、人事労務の業務の中で採用担当者の方とやりとりする機会が多く、採用関係に興味があり、今後私が取り扱える人事労務の業務の1つにぜひしたいと思っています」
とか。
経験がないくらいはなんとでもなる。「やったことがないのでやってみたい」は別におかしい志望理由ではありません。
問題は、採用者が求めるものを自分がやりたいとは思わない場合はどうしたらいいのか。
たとえば、採用者はデータプライバシーに関する業務担当者を採用したいと考えている。
しかし、自分はデータプライバシーに関する業務は担当したくない。
この場合は簡単です。
応募しないことにすればいい。
興味がない会社に応募しないというのは当たり前のことと思えますが、「応募しない」という判断は意外に難しい。
なぜか。
以下のような志望理由以外の理由でその求人情報が魅力的に見えるからです。
- 有名な会社である
- 給料がいい
- 他にも業務がある
- 今の会社を早く辞めたい
しかし、相手の求めているものを自分が持っていない場合、転職すべきではありません。
端的に言って相性が悪いのです。何も共通点がない。
入社してからうまくいかないのが予期できます。
この場合はいくら当該求人が素晴らしく見えても応募しないのが賢明です。
このとおり、採用者が求めているものを真剣に考えることは、自分に合う応募先かどうかを選別することにもなり、とてもよいことです。
無駄な応募を減らし、転職してからのミスマッチ確率を下げることができます。
とりあえず応募はダメですよ。
(4) 複合志望理由の威力 | シンプルだけど効果的
上記(3)までで複数の志望理由を用意します。
たとえば、「M&Aができるからです」と「部下数が多いからです」は、それぞれ単独では志望理由としては弱いかもしれません。
しかし組み合わせれば事情は違います。
志望理由は、複数の志望理由を言うのでかまいません。むしろそっちの方がいい。
そして、「これらの志望理由に全て合致するのは御社しかありません」と言うと効果的です。
応募者:M&A関連業務に興味があり、また、今よりより大きなチームを率いて会社に影響を与えられるようになりたいと考えたからです。これら2つの志望理由が叶う場所は御社以外にありません。
この「それぞれの志望理由は大したことないが、全てを備えている会社はあまりなく、御社はちょうどそれに当てはまる」という複合志望理由はなかなか使えます。
食べログでレストランを探したり、スーモで賃貸マンションを探す場合を考えてください。
金額がいくら、場所がいくら、とあれこれ条件ボックスにチェックを付けていきます。それぞれの条件は大したことないですが、複数のチェックボックスにチェックを付けると、数が絞られていきます。
それと同じで複数条件(複数の志望理由)をかけ合わせるのは効果的です。
6 完璧志望理由は強力な武器
本記事で紹介している完璧理由は、転職活動において有利な武器になります。
なぜかといえば、ライバルはこの完璧理由が採用するような有効な逆算アプローチを活用していないからです。
たとえば、dodaのウェブサイトでは志望理由の作り方はこんな風に説明されています。
まずは、自らが働くうえでの軸となる目標やモチベーションを明らかにしましょう。具体的には、「自分がどうなりたいか(自分軸)」と「どう社会に貢献していくか(社会軸)」というふたつの観点から整理し、働き方の軸を作ります。「スキルアップしてその道のプロフェッショナルになりたい(自分軸)」「社会的なインパクトの大きな仕事をすることがモチベーションになる(自分軸)」「高齢者福祉の向上に貢献したい(社会軸)」など、漠然としたものでもかまいません。
次に、面接を受ける会社がどんな業界に属し、その中でどんな強みを持っているかを考えます。業界の規模、トレンド、その中で応募企業がどのような商品、サービスを提供し、どのようなポジションにいるのかなどといった、客観的な情報を収集し、応募企業ならではの強みや特徴を見つけ出していきましょう。
そして最後に、自らの働く軸と応募企業ならではの強み・特徴が重なる点を洗い出し、「〇〇(働く軸)を実現するためには、△△(応募企業ならではの強み・特徴)な企業で働く必要がある」「△△(応募企業ならではの強み・特徴)である企業で働くことで、〇〇(働く軸)を実現できる」と言い換えてみます。
面接で志望動機を質問されたときの正しい答え方と回答例文 |転職ならdoda(デューダ)
よくありそうな説明です。
本記事で紹介している完璧志望理由とdodaのような一般的な志望理由の作り方を比較すると、一般的な志望理由は自己中心的です。まず自分ありき。天動説です。
それでも採用者と接点があればいいんです。
しかし、自分から始めるとどうしてもズレがちです。
相手から始める完璧志望理由の作成法であれば、ズレる確率が下がります。ゴールを見てそれに合わせるからです。
ライバルに打ち勝って興味ある企業の内定を取りたいなら、本記事で紹介する完璧志望理由を作り上げましょう。
7 完璧志望理由を活用した転職活動の実践
本記事で紹介した完璧志望理由を作り上げるポイントを2点最後に書きます。
①よく考えよ。時間を惜しむな。
②転職エージェントをうまく使え。
完璧志望理由を作るには、採用者のことをよく知らねばなりません。下調べは入念に。
そしてそれに合う自分の志望理由の作り込みもしっかりとやりましょう。
「サクッと志望理由作成」とかじゃダメですよ。
楽したいならいいですけど、自分が求めるのは短時間で楽にできる準備か、より高い確率の内定取得かどちらでしょう。
また、採用者のことを知るには転職エージェントの活用が重要です。
なぜって採用者の内部にいる人間である採用決定者と接点があるのは転職エージェントしかいないからです。
キーパーソンの情報、しかも当該求人情報について面接外で情報を得るには転職エージェントから聞くしか方法がない。
採用者が神様だとすると、転職エージェントは神と交信ができる神の使いです。
この神の使いがダメだと苦しいです。
応募者:「神(採用企業)は、なんとおおせでしょうか?」
転職エージェント:「神は、何も語らぬ!!」
こんなんじゃ困るのです。
転職エージェントによっては、こちらが質問する前からすでにその求人情報についてかなり詳しいこともあります。
最初は詳しくなくても、応募者からの質問を受けて「確認します」と言って採用会社に問い合わせてくれる人もいます。
こうした有能な転職エージェントを活用すべきです。
求人情報について質問しても、簡単なものにも答えられない、調べようともしないダメ転職エージェントにはなるべくなら頼るべきではありません。
無能な転職エージェントに頼るのはやめ、有能な転職エージェントに頼るべきです。
無能か有能かはどう見極めるか?
複数の転職エージェントに応募して、気になる求人があったときにその転職エージェントに質問をしてその反応を見極めればいいのです。
たとえば、転職エージェントA社、B社、C社、D社、E社の5社に登録する。
転職エージェントA社とB社からソニーの求人情報が来た。
これは気になる。
A社とB社について、求人票や一般的な情報ではわからない当該求人に関する質問を転職エージェントA社とB社にぶつけてみましょう。
そして、その質問に対する回答がよかった転職エージェントを選び、その転職エージェントから応募しましょう。
複数の転職エージェントに登録することでより多くの求人情報が得られ、また転職エージェント自体を比較することもできます。
これは完璧志望理由を作り上げる、それを活用するという一連の転職活動で重要なことであり、これができれば良い転職ができる可能性が高まります。
どの転職エージェントに登録すべきかは以下過去記事の一覧を参考に。
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