質問を制する者は採用面接を制す。
転職活動において面接での質問は超重要です。
相手から情報を得るだけでなく、自分を売り込むのにも質問が圧倒的に重要です。
面接突破率を上げたければ、質問上手になるべきです。
この記事の内容は採用面接にトピックを絞っていますが、採用面接以外の仕事や生活にももちろん応用可能です。
弁護士はクライアントに上手に質問をしないといけません。
弁護士以外でも質問は仕事で重要なテクニックです。
1 質問は面接官の好感度を上げる
面接官に好印象を与えるために質問はとても効果的。
質問をうまく使うと面接に通る確率は上がる。
質問することによってそれだけで好感度が上がります。
質問力の高い人、つまり相手に情報を求める人は、応答性が高いと認識され、好感を持たれます。
“It Doesn’t Hurt to Ask: Question-Asking Increases Liking,” Journal of Personality and Social Psychology 113, no. 3, 430-52.
(high question-askers—those that probe for information from others—are perceived as more
responsive and are better liked.)
上記論文はハーバード・ビジネススクールのウェブサイトに載っています。
質問の効果を検証した論文です。
ハーバードつながりで言うと、「ハーバード・ビジネス・レビュー」の記事に、ビジネススキルとしての質問の重要性を説くものがありました。
アリソン・ウッド・ブルックス=レスリー K. ジョン(いずれもハーバード・ビジネス・スクール助教授)「心のつながりを構築し、信頼を醸成するリーダーのEI(感情的知性)を高める優れた質問力」ハーバード・ビジネス・レビュー2018年12月号
その中で、面接での質問の有効性について以下のとおり言及されています。
質問は強力なツールであり、質問することが社会通念にそぐわない状況では特に効果を発揮するらしい。面接を例に挙げよう。
多くの人が「質問する場面じゃないでしょ。普通は。」と思うところで質問をするのが効果的とのことです。
たしかに、面接は応募者がアピールする場=質問は面接官がする場、と考えるのが社会通念なのかもしれません。
一般には「応募者は質問に答えるものである」と思われているが、ロンドン・ビジネススクールのダン・ケーブルとノースカロライナ大学のバージニア・ケイの研究によれば、ほとんどの応募者は面接中に自己アピールしすぎているという。そして自分を売り込むのに懸命になるあまり、面接担当者や組織、業務内容について質問することを忘れがちになる。
なるほど。多くの人がそうなっていそうです。
面接でアピールばかりしてはいけません。
では面接で質問をするとどういう効果があるのか。
質問すれば、担当者が面接に真剣になるし、応募者に対する好感度も上がるはずだ。しかも、満足できる仕事なのかどうか、応募者も見極めやすくなる。応募者のほうから、「私が伺うべきなのに、まだ伺っていないことはありますか」などと質問すれば、自分の力量をそれとなく示してラポールを築けるばかりか、応募職について重要な情報を聞き出すことができる。
上記部分で書かれている面接での質問の効果はこうです。
【質問の効果】
- 担当者が面接に真剣になる
- 応募者に対する好感度が上がる。
- 応募者も満足できる仕事であるかどうか判断しやすくなる(情報を聞き出せる)
3は当然のことですが、1と2はもっと重視されてしかるべきでしょう。
2 こうやって質問すべし | 聞き上手の質問術
面接で話が盛り上がらず、シーンとなってしまったらどうしよう。。
大して重要な話もしないまま静まったらヤバいぞ。
そこで必要になるのが「質問」だ。
(PRESIDENT (プレジデント) 2018年12/17号(話がうまい人入門! ))
どんな質問をすればよいか必殺の質問テクニックを紹介します。
(1) 「閉じた質問」は避ける
「あなたは今朝朝食を食べましたか?」
こう質問されたら、回答者は「はい」か「いいえ」しか答えられません。
これでは物足りない。
会話もこれから発展しません。
閉じた質問は、簡潔に相手から情報を得るには向いています。ダメというわけではありません。面接でも必要な情報を取りに行く場合は閉じた質問をしても問題がありません。
しかし、面接を突破したいと思うなら、面接官に思うように話させる方がいいです。
(2) 適度に「開いた質問」で相手にある程度自由にしゃべらせる
「今朝朝食を食べましたか?」よりは、「今朝の朝食はいかがでした?」の方が相手にしゃべる内容の裁量が広く与えられます。
面接ではこのような相手に話す内容を広くコントロールさせるような「開いた質問」をうまく使うのが望ましいです。
なぜそんなに開いた質問がよいのか。有識者のコメントを紹介します。
(開いた質問によって)話し手は、自分から主体的に会話を進めていると感じられ、話を拡げることもできます。聴き手は、たくさんの情報や予想もしなかった情報を得ることができます。
(相川充『人づきあい、なぜ7つの秘訣?』(新世社、2019年6月)63ページ)
開いた質問は、「私は、あなたに興味があり、あなたの話を聴く準備が整っています。好きなように話してください」という暗黙のメッセージになりますので、話を聴くという贈りものをするときのきっかけとしては適しています。
自由回答式の質問(「それについてもっと教えてもらえますか?」、あるいは「すごい!どうやったらそんなことができるのですか?」)をすれば、相手の話をきちんと聞いていることを示せるだけでなく、後で役に立つかもしれない詳しい情報を手に入れることもできる。
(ジョーナ・バーガー『THE CATALYST 一瞬で人の心が変わる伝え方の技術』(かんき出版、2021年3月)付録1 アクティブリスニング)
開いた質問は相手に「関心がある」と伝え、相手に「自分が主体的に会話を進めている」という安心感を与えます。思わぬよい情報がもたらされる可能性もあります。
「開いた質問」にも注意点があります。
上記の2冊の本は閉じた質問の有益性を説いていますが、注意点を説いていません。
あまりに開きすぎた質問はNGだということです。
私が昔司法修習生だったころ受けた刑事裁判の証人尋問の研修で「クローズすぎずオープンすぎない質問をするべきだ」と教わりました。
その際に言われた”究極のオープンな(開いた)質問”はこれです。
どうぞ (あなたの好きに話してください)
もはやこれは質問の形をしていません。
オープンすぎる質問です。言われた方は何を話していいか困ってしまいます。
究極の開いた質問までいかなくとも、開きすぎな質問はついしがちです。
たとえば、以下のような質問はイマイチです。オープンすぎます。
御社はどんな会社ですか?
仕事はどうですか?
申し少し相手に枠組みを与えた方が相手は話しやすい。
オープン過ぎない適度に開かれた質問が鍵です。
(3) 相手が話した内容に関連した突込み質問”follow-up question”が最高の質問
上述したハーバードの論文“It Doesn’t Hurt to Ask: Question-Asking Increases Liking,” Journal of Personality and Social Psychology 113, no. 3, 430-52. によれば、follow-up question(フォローアップクエスチョン)が好感度を一番上げる類型だとされています。
フォローアップ質問(follow-up question)とは、前の会話のターンで話した会話の内容をより詳しく話すよう相手に促す質問のことをいいます。
We define follow-up questions as questions that encourage the partner to elaborate on the content of their prior conversational turn (Davis, 1982)
“It Doesn’t Hurt to Ask: Question-Asking Increases Liking,” Journal of Personality and Social Psychology 113, no. 3, 430-52.
同論文による質問タイプは以下6類型です。
①フォローアップ(Follow-up)
②完全転換(Full switch)
③一部転換(Partial switch)
④反射(Mirror)
⑤前置き(Introductory)
⑥修辞疑問(Rhetorical)
詳細紹介はここではしませんが(いつかこの論文を紹介するかもしれません)、フォローアップ質問が一番好感度を上げる質問であるとの実験結果が出ています。
面接官が何かしゃべったら、それについて関連する質問をして話題を広げましょう。
面接官に「あなたに関心があるんですよ」と伝えましょう。
「今、~とおっしゃったことについて質問させてください。」と。
このフォローアップ質問をさらに2類型に分けて精緻化したものを紹介しましょう。
「広げる質問」と「深める質問」です。
樺沢氏は「会話を盛り上げる質問には2種類あります」と言う。
それが「広げる質問」と「深める質問」だ。
(PRESIDENT (プレジデント) 2018年12/17号(話がうまい人入門! ))
①「広げる質問」
それ自体ではなく関連した別のものを聞く質問です。
たとえば相手が「私はコーヒーが好きなんですよ」と言ったとき、「じゃあ、お気に入りのカフェがあるんですか?」とか、「朝はいつもパンとコーヒーですか?」というように、コーヒーに関連した別のことを聞くのが「広げる質問」だ。
(PRESIDENT (プレジデント) 2018年12/17号(話がうまい人入門! ))
これはやや転換型質問も入っていますが、程度によります。
「コーヒーと言えば」ということで話題を広げる場合に使います。
これよりは次の「深める質問」の方がよりfollow-up questionとしての性質を強くもっています。
②「深める質問」
それ自体に関してより詳しいことを聞く質問です。
これこそがfollow-up question
「どんな種類の豆が好きですか?」「自分で豆を炒ったりするんですか?」というように、コーヒーそのものに関してより詳しいことを質問するのが「深める質問」である。
(PRESIDENT (プレジデント) 2018年12/17号(話がうまい人入門! ))
深める質問をして、面接官に「お?聞きたい?」と思って もらいましょう。
面接官は、自分の情報を与えるとうれしい気持ちになるのです。
③「広げる質問」と「深める質問」の使いこなし
人間、自分の好きなものについて話すときは饒舌になる。相手が何を好きかを知るために、まずは「広げる質問」でアタリをつけ、これが好きだとわかったら、今度は「深める質問」をして相手に語らせるといい。
(PRESIDENT (プレジデント) 2018年12/17号(話がうまい人入門! ))
「広げる質問」でさぐり、これだ!と思ったら「深める質問」で語らせましょう。
人は、語るのが大好きなんです。自分の考えを語るのは何物にも代えがたい時間。「話を聞いてくれてありがとう。お金はいらないよ」といったことも起きるくらいです。
他人に情報を与える機会は、内的な報酬をもたらすようだ。ハーバード大学が行った研究では、人は自分の意見が他人に広まるならば、進んで金銭的利益を見送る傾向にあることがわかっている。
(ターリ・シャーロット『事実はなぜ人の意見を変えられないのか-説得力と影響力の科学』(白揚社、2019年8月)13ページ)
(4) 「なぜですか?」と聞くのは詰問になって相手にプレッシャーを与えてしまう
面接官が何か話したのを聞いて、それについて理由を尋ねる「なぜ?」型質問は、follow-up questionです。うまく使えば効果的な質問の仕方です。
しかし、このwhy質問には注意です。
「なぜ」の質問(「なぜゴミを捨ててくれなかったの?」)は、責められている、尋問されているといった印象を相手に与える。
(ジョーナ・バーガー『THE CATALYST 一瞬で人の心が変わる伝え方の技術』(かんき出版、2021年3月)付録1 アクティブリスニング)
私が思い出せる嫌な「なぜ?」質問の思い出です。
ある会社で先輩社員、私、私の後輩社員の3人で会議をした時のことです。
私と後輩は同じ意見を持っていて、先輩社員に対して「~すべきです」と意見を述べました。
すると、先輩社員は、私が言い終わるとすぐにこう言いました。
なぜ?
間髪いれず、短く言われ、ものすごく感じが悪かったです。
この「なぜ?」は、follow-up質問のためというより相手を否定するために言い放たれています。
「なぜ(そんははずはないだろう)」という否定の意見を述べているのです。修辞疑問ですね。
また、「なぜ(そう思うのか私にわからせてみなさい)」「そんなダメなアイデアを私はとても考えつきもしなかった。そんな私にわかるように説明してみたら」という上から目線を強く感じました。
言葉は、言葉数が多い方が丁寧であると受け取ってもらえます。「なぜ?」は少なすぎです。
じゃあ理由を聞きたい時はどうすればいいのか?
「自由回答式の質問(「それについてもっと教えてもらえますか?」、あるいは「すごい!どうやったらそんなことができるのですか?」)」をせよというのがジョーナ・バーガー『THE CATALYST 一瞬で人の心が変わる伝え方の技術』(かんき出版、2021年3月)のアドバイスです。
では理由を聞きたいときは「なぜ質問」をどうやってすればいいのでしょうか。
上記の先輩社員なら以下にように答えることができたかもしれません。
~と考えるているわけか【反射して受け止める】。その意見についてもっと説明してもらえるかな?
3 質問は事前に準備する
質問は重要ですが、いい質問をしなければなりません。
follow-up questionが大切だからといって出たとこ勝負で準備なしに臨むのはイマイチです。
面接対策としては、「きちんと質問をする」と心がけるとともに、「どういう質問をするか」を事前に考えておくのが効果的です。
面接官が話してうれしい、そして自分も知りたい質問を事前にリストにして準備しておくべきです。
面接で都合よくいい質問が思い浮かぶかわかりませんよ。
「面接中にいい質問思い浮かぶかなあ」なんて期待するよりは、事前に時間をかけて先に作っておくべきです。
面接によっては「いくつか質問を準備してきたのですが、メモを見てもよろしいですか?」と言っても嫌な顔はされません。「おっ、感心な奴だな」という反応を得られる時もあります。
面接に質問は重要。そして、質問には準備が必要です。
面接の質問リストを作り上げるには、信用できる転職エージェントに相談してもよいと思います。内定確率が上がるなら喜んで協力してくれるでしょう。
嫌がられたらどうするか?
おめでとうございます。そのエージェントは良くないエージェントと評価できますのでできるだけ依頼を避けましょう。
4 面接官の著作についてあれこれ質問した私の体験談
私の応募者としての採用面接体験談。
ある法律事務所の面接(1対1)でのこと。
「面接時間は1時間です。今回はあなたからの質問に答えることをメインに進めたいと思います。」と言われ、いきなり質問から始まるスタイルでした。
(1時間!そんなに!マジか!)と思いました。
1時間時間をとってもらっているのに、15分で終わるわけにはいきません。
- 「どんな人材を求めていますか?」
- 「仕事で大事にしているのはどんなことですか?」
- 「休日は何をされていますか?」
- 「ホームページに~という記載がありました。あれはどういうことですか?」
などなど色々聞いていきました。
そのうち、「ご著作を読みました。~ということが書かれていました。」と言う面接官が書いた本について質問をしました。
そうしたら喜んでくれた様子でしたので、その本についての質問を続行し続け、本に関連する質問やさらに本に突いて突っ込んだ質問をしたりしました。
事前調査(面接官は本を書いていると突き止める。本を読んで質問を考えておく)をし、follow-up questionをたくさん放つというテクニックを駆使したのです。
この面接は突破し、最終的に内定ももらえたので、follow-up questionを多用してする作戦はうまくいったかもしれません。
持ち時間1時間で面接官を飽きさせないのは大事です。
5 ウォール街の王、ブラックストーン創業者も質問を推奨
かつてリーマン・ブラザーズの「M&A部門で責任者」を務め、その後世界屈指の投資会社ブラックストーンを創業したスティーブ・シュワルツマンは、「わたしの考える面接成功の心得を伝授しよう」と自伝の中で8つの心得を紹介しています。
そのうちの1つが「好奇心をもつ」こと。
質問をして双方向にすべきだと述べています。
好奇心をもつ。よい面接は双方向的だ。質問し、助言を求め、面接官に職場で働いてなにがもっとも楽しいか尋ねよう。面接官を会話に引きいれる方法を見つけ、会話が一方通行にならないようにしたい。面接官も話したがっているし、自分が知っていることをわかちあいたいと思っているものだ。
(スティーブ・シュワルツマン『ブラックストーン・ウェイ PEファンドの王者が語る投資のすべて』(翔泳社、2020年10月)67ページ)
これは役に立つアドバイスです。
無駄がない。
- 助言を求めよう
- 面接官に職場で働いてなにがもっとも楽しいか尋ねよう
- 面接官を会話に引きいれる方法を見つけよう
- 会話が一方通行にならないようにしよう
- 面接官も話したがっている
- (面接官は)自分が知っていることをわかちあいたいと思っている
率直に助言を求める。面接官は、助言を求められてそれに対して答えてアドバイスすれば自分の自尊心が保てます。ポイントアップ。
面接官に職場で何が楽しいかを聞けば、「何が辛いか」を聞くよりも面接官の気分がよくなるでしょう。
面接官を応募者に質問をするだけの存在と思うべからず。面接官もただ聞いているよりも自分の話したいことを話す方がハッピーに決まっています。
6 質問が面接の成否を分ける
質問の重要性は語りつくせないほどなのですが、きちんと意識されて実践されているかというと、実際はそうではないと思います。
質問の重要性は、世界的なビジネス誌(ハーバード・ビジネス・レビュー)でも紹介されています。
私やどこかのエージェントが経験則でなんとなくいっているわけではなく、権威ある文献に記述のあることなのです。
よい質問者になって面接突破率を上げましょう。
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