リファレンスチェック・バックグラウンドチェックとは | 転職で前職調査を拒否できるのか

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外資系企業に応募すると、「前職の職場に照会をかけることがあります。同意しますか?」という質問をされることがあります。

リファレンスチェック(前職調査)というやつです。バックグラウンドチェック、採用調査といった名称もあります。

「そんなこと言われても…」というのが正直なところです。

書類を出して転職活動をしているということは、程度はともかく、現職場に何かしら不満があるからです。

そんな職場に照会をかけられてもあまりいい気分はしません。

そんなリファレンスチェックは一体どんなものなのでしょうか。

目次

1 リファレンスチェックとは

リファレンスチェックとは、中途採用時に、応募者の性格や前職での振る舞いを調べることです。

企業が中途採用の際に信用調査の一環として、前職への実績、人物像などを第三者に照会を行うことです。また書類選考や採用面接だけではわからない求職者の人物像や、前職での仕事ぶりを確認することで、採用側のリスクを軽減することが目的です。

リファレンスチェックのback check(バックチェック) | オンライン完結のリファレンスチェックサービス

調査会社が採用企業から受託して応募者の元上司や元同僚に接触して調査します。

その利用は「新進企業中心に広がって」いますが、「再チャレンジを妨げる可能性もある」(日本経済新聞2020年8月8日朝刊「企業向けサービス広がる――中途採用で「前職調査」、法抵触避け個人から情報(真相深層)」)という曲者です。

(1) リファレンスチェックのやり方

リファレンスチェックは以下の段取りで進みます。

  1. 利用企業は応募者から同意を取る
  2. 利用企業は応募者が名前を挙げた前職の上司・同僚・部下にメールで質問を送る
  3. 前職の同僚等が質問に回答する
  4. 調査会社が回答を解析する。
  5. 調査会社は解析の結果判明した①応募者の思考の特徴、②採用後考えられるリスク、③次の面接で聞く質問を利用企業に報告する。

「ストレス耐性やチームワークに問題がある」

「論理的で効率優先、設定した目的に向け一直線」

同社が企業向けに作った調査サンプルにはこんな文言が並ぶ。

(日経新聞・同上)

調査会社によってはオンラインで調査は完結するそうです。

調査会社は楽に儲けられますね。

現に大儲けのようです。

 「昨秋開始のレファレンスサービスは絶好調。実施数は約5000件になる」。バックチェックの名で前職調査を提供するROXX(東京・港)の中嶋汰朗社長は話す。

(日経新聞・同上)

人手による調査をする調査会社もあるようです。

日経新聞で紹介されていたのは大阪の株式会社企業サービス。

同社は、「リファレンスチェックだけではネガティブな情報は出にくいことから、一般の採用調査を併用するケースが多くなっています」(同社ウェブサイト)と説明しています。

この会社の提供する一般的な1名あたりの調査の費用は33,000円だそうです。

数百万円かけて雇う従業員なら33,000円くらいならいいか、と思っちゃいます。 

(2) リファレンスチェックでされる質問は?

リファレンスチェックでは質問が調査の大部分を占めます。

どんなことを元同僚は質問されるのでしょうか。

ROXXのウェブサイトでは以下のような質問がされると説明されています。

① 勤務関連

  • 在籍期間は◯年◯月から◯年◯月までと伺っておりますが、間違いはありませんか?
  • 役職・仕事内容・実績は合ってますか?
  • 遅刻や欠勤は多くありませんでしたか?

② 人物像

  • 候補者とはどのような関係性でしたか?
  • 周囲とのコミニュケーションはどうでしたか?
  • 仕事を進めるうえで、個人とチームどちらが合っていますか?
  • 候補者はどのような人物ですか?
  • また一緒に働きたいと思いますか?

③ スキル

  • 長所・短所はなんですか?
  • 問題解決能力・意思決定能力はありましたか?
  • リーダーシップはありましたか?
  • 部下がいた場合、部下の教育はできていましたか?

(3) リファレンスチェックの目的・メリット

採用する側からすれば、前職調査をしたくなる気持ちはよくわかります。変な人に入社されたら大変です。従業員は簡単にクビにできません。

中途採用時のミスマッチ(「こんなはずじゃなかった…!」)を防ぐのがリファレンスチェックの目的です。

また、経歴詐称の調査も重要な目的です。

さらに、選考の一つの判断材料にすることも期待されています。職務経歴書や面談だけでわからない部分を見ようということです。 

(4) リファレンスチェックの問題点・デメリット

企業にとってもリファレンスチェックはいいことづくめではありません。

応募者にもあまりうれしくない側面は当然あります。

① 誤った情報がもたらされる危険性

元同僚が適切な回答を質問に対してしなければ、調査は台無しです。

② 大したことはわからないかもしれない

元同僚が当たり障りのない回答をすれば、大したことはわかりません。

「大きな問題はなさそう」というのがわかるだけでもいいのかもしれませんが。 

③ こそこそ裏で調べてやましいし、違法ではないか

企業はなんでもかんでも調査できるわけではありません。

職業安定法は指針などで求職者の個人情報について、出生地や家族の職業、人生観や労働組合への参加など収集を原則禁じる項目を例示。

(日経新聞・同上)

また、調査に協力する企業や元同僚も、開示してはならない情報を漏洩することで責任を問われ得る立場に立たされます。

2005年全面施行の個人情報保護法23条は、前職場が持つ人事考課や勤怠記録などのデータを本人の同意なしで開示することを禁じ、野放図な調査を制限した。

(日経新聞・同上)

日経新聞では、元同僚や上司が、応募者の前職勤務中に関する情報は社内情報であるとして、それを他者に伝えることは社外秘情報を開示することになりかねないと指摘されています。

日経新聞記事中、砂押以久子・立教大大学院講師は、「昨年9月、病歴に関する調査自体を不法行為とし賠償を命じる判決が札幌地裁で出た。こうした調査に関与すれば責任を問われる可能性がある」と指摘しています。

病歴とか宗教といったセンシティブ情報をうっかり取り扱うのは危ないのです。

④ 不都合な過去を暴かれる応募者のダメージ

応募者が、前職場で不当に上司から嫌われていて、あらぬ過小評価を受けてはただの被害者になってしまいます。

また、過去職場で問題は起こしたが、心機一転がんばろう!という再起を図ることもリファレンスチェックで阻害されてしまうおそれがあります。

辛い現状打破として転職を使うことを制限されてしまうとしたら問題です。

2 リファレンスチェックは事実上拒否できない

応募者はリファレンスチェックを拒否しようがありません。

「嫌です。拒否します。」と強気で言ったら、バックグラウンドに何も問題がなくても、採用企業から「何かやましい過去があるに違いない。しかも協調性もない。」と思われる危険性大です。

企業の採用責任者は「レファレンス自体を拒否されたら選考を中止する」と認める。応募者は同意するしかないのが実情だ。

(日経新聞・同上)

なので、私は転職応募時に事前に打診された際は「なんか嫌だな」と思いつつも、バックグラウンドチェックがありうることに全て同意しています。

3 リファレンスチェックの利用例

リファレンスチェックは、外資系企業がよく利用しています。

レファレンスチェックは米国で発展した。人材紹介会社、ロバート・ウォルターズ・ジャパンのジェレミー・サンプソン社長は「多民族のうえ成果主義なので、スキルを持ち成果に貪欲であるか、転職先のカルチャーで能力発揮ができるかを重点に聞く」と説明する。

(日経新聞・同上)

また、新進企業が最近ではよく利用しているようです。

ROXXのサイトで紹介されている利用企業は次のようなところがあります。

  • サイバーエージェント
  • メルカリ
  • マネーフォワード
  • パーソル
  • フリー

4 リファレンスチェックに備えるには常日頃の行いを意識

リファレンスチェックで悪い評価を受けないようにするには、現職場での行いをしっかりするしかありません。

現職場できちんとしていれば悪い結果は出にくいです。

また、悪いことを予防できるだけでなく、ポジティブな結果が伝えられて選考でよい方向に働く可能性もあります。

日経新聞の記事では、ポジティブ情報とネガティブ情報はほぼ半々であると紹介されていました。

企業は、調査会社を使わず、人づてやSNSを使って自らバックグラウンドチェックのようなことをすることもできます。

いつでも自分の仕事ぶりは他人からチェックされうるのです。

そんな環境での最強の転職術は、やはり現職をがんばることです。

転職において、ネガティブ情報発生を防ぎ、ポジティブ情報を増やしてくれるのは、現職でのよい働きです。

転職成功には現職をがんばりましょう。 

転職で成功するには今(現職)を大事にする

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