私は、働き始める前にブログアフィリエイトで年間60万円ほど売上を上げたことがあります。
転職は4回しています。
副業=ブログアフィリエイト、というわけではないですが、副業は多くのサラリーマンにとっては時間・労力を大いにかけるべきものとは思えません。
会社員本業の方がコスパがいい。
会社員を辞めて自分で安定的に年間数百万円稼ぐのは難しい。
今の会社で年収が増えないなら転職して増やすのがいい。
副業すれば収入が増えるという愚かな足し算思考
最初に、「陥りがちな愚かな発想」について説明します。
それは「副業をすれば単純に収入が増える」という発想がよろしくないということです。
月収20万円の人が、時給1000円というあまり高くないバイトであっても空き時間に30時間働けば、月収23万円になって収入が増えます。単純な足し算です。
これをもくろむ人はこう考えます。
- 今より収入がほしい。
- 空き時間はある。
- 何か時間を使って金になれば、本業収入の足しになる。
これは、大企業が巨額M&Aに失敗するのと同じです。
私は大手日系企業でM&Aに携わっていました。
巨額買収して失敗する企業の考えはこうです。
- 売上・利益を伸ばしたい。
- 金は余ってる。
- 買収すれば売上・利益が増える。
個人も会社と発想は似ています。
時間が余ってる。
何か足しになることないかな。
余ってる時間を使って収入を増やす。
余ってる金を使って会社を買収する。
このような現状につぎ足す足し算思考がなぜだめなのでしょうか。
それは、自分が得るものの代わりに失うもののことを考えていないからです。
収入を得る代わりに何を失うのか。
投資の視点がないのがよくないのです。
副業するかは自分の時間・労力の投資として考えよ
副業をするとなると、自分の時間・労力を割いて見返りを得ます。
これは投資です。
投資とは何か。
ウォーレン・バフェットが説明する投資の定義はこうです。
投資とは、将来より多く消費できるようになるために、今日の消費を先送りする活動である。
リスクとは、この目的が達成できない可能性をいう。
Investing is an activity in which consumption today is foregone in an attempt to allow greater consumption at a later date. “Risk” is the possibility that this objective won’t be attained.
(ウォーレン・バフェット「株主への手紙 2017年」)
バフェットと同じように投資を定義する著名投資家ハワード・マークスの説明によれば以下の通りです。
投資とは将来の出来事から利益が得られるように資金を振り向けることである
ハワード・マークス『市場サイクルを極める 勝率を高める王道の投資哲学 (日本経済新聞出版)』(日本経済新聞出版社、2018年)350ページ
新たに副業をして時間と労力を費やすのですから、その見返りが十分なのか、良い投資といえるのかを考えるべきです。
また、「リスク」についても考えを改めるべきです。
多くの副業は「費用がかからない。したがってノーリスク」ということが謳われていますが、これもバカバカしい発想です。
時間・労力を費やして何も得られない(あるいは乏しい見返りしか得られない)ことほど悲しいことはありません。
投資目的が達成できないことをリスクと捉えるべきです。
正しい副業投資の発想はこうです。
- 副業は投資として考えるべきである。
- 投資としての副業は、将来より多くの利益を得られるように、自分の今の時間・労力等を振り向けることである。
- リスクとは、この投資目的が達成できないことである。
副業投資の見返りとなる「利益」は、人によっては、お金だけでなく、やりがいといったものも含まれます。
ただし、時間をかけた割に対したものが得られない可能性が高い(投資目的が達成できない可能性が高い)のであれば、その副業は「ハイリスク」です。
時間を大切に。
個人の時間には明らかに限りがあり、その意味で非常に貴重な資源である。
ーアンドリュー・グローブ(元インテルCEO。同著『パラノイアだけが生き残る』(日経BP社、2017年9月)183ページより)
副業が投資先として適格か機会費用を考える
ある副業をすべきか否か。
言い換えると、その副業は投資として適格かはどう考えればよいのでしょうか。
自分の時間をある副業に費やすとする。
その場合には、「その時間を副業に費やさない場合、その時間を使ってできる他の最高の活動は何か。その活動と副業、どちらの方が良いのか」と考えましょう。
副業 vs その他の考えられる最高の活動
時間は1つのことにしか使えない。
どちらの方が時間の使い道として有効なのかを考えるべきです。
間違っても前述の「足し算思考」をやってはいけません。
「どうせ暇だから、足しになればいいや」という考えです。
そんなちんたら時間を使ってたら時間がいくらあっても足りません。
比較して時間の使い方を決定せよ、というのは機会費用を考えよ、というのと同じです。
機会費用(opportunity cost)とは、代替的な選択肢の中で最善のもののことを指す経済学の概念です。
機会費用の説明としては以下のようなものがあります。
機会費用とは代替案だ。なにかをするために、今または未来にあきらめることになるものごと、つまり選択を行うときに私たちが犠牲にする機会のことだ。
……機会費用についてはこんなふうに考えるべきだ。あるものにお金を使えば、そのお金は今もこの先も、ほかのなにかに使うことはできない。
(ダン・アリエリー&ジェフ・クライスラー『アリエリー教授の「行動経済学」入門―お金編―』(早川書房、2018年)25,26ページ)
副業でいえば、「副業のために時間を費やせば、その時間はほかのものには使えない」ということです。
なぜ経済学を持ち出すかというと、「経済学は選択の学問である」からです。
お金ではなく、選択こそが経済学の研究対象のすべてに共通する特徴である。
(『アセモグル/レイブソン/リスト ミクロ経済学』(東洋経済新報社、2020年4月)4ページ)
副業をするかどうか考えるのは、自分にとってできる限りの最高のことをしたいと思うからです。
このように、利用しうる情報をもとにして、実現可能な最善の選択肢を選ばうとすることを最適化(optimization)といいます。
最適化を図るには(最高の意思決定をするには)、機会費用を考えねばいけません。
何をするにせよ、最適化のためには、つねに機会費用を念頭に置く必要がある。要するに、最適化とは、限られた資源の別の使用法を常に考えることなのだ。
(『アセモグル/レイブソン/リスト ミクロ経済学』(東洋経済新報社、2020年4月)14ページ)
副業をするなら、時間や労力を費やすことによって得られる将来の利益・価値が、他のものにその時間や労力を費やした場合に得られるものより大きくなければいけません。
価値は機会費用を反映していなくてはならない。あるモノや経験を得るために私たちがあきらめてもよいと思うものを、正確に反映していなくてはならない。また私たちはさまざまな選択肢の実際の勝ちに応じてお金を使うべきだ。
(ダン・アリエリー&ジェフ・クライスラー『アリエリー教授の「行動経済学」入門―お金編―』(早川書房、2018年)33ページ)
ウォーレン・バフェットの右腕として知られるチャーリー・マンガーも、投資判断・意思決定についてこう述べています。
マンキュー*の経済学の最高のテキストを読めば、彼は知性的な人たちは機会費用に基づいて意思決定を行うと言います。言い換えれば、重要なのは代替案です。そのようにして私たちは全ての意思決定をします。
(バークシャー・ハサウェイ年次総会2003年でのQAセッションにて)
*マンキューは、ハーバード大学の経済学者です。
副業をしようと思うなら、それに充てる時間を使って他にできる最高の活動を考えるべきです。
- 勉強する
- 運動する
- 休む
- 遊ぶ
人によって価値評価は様々です。
自分にとって価値ある活動を意識する必要があります。
しかし、多くの人は機会費用を考えることができません。
賢い判断ができないということです。
機会費用とは、お金に関する決定を下すときに必ず考えなくてはならないことだ。今お金を使うという選択によって、どんなものごとをあきらめることになるのかを考える必要がある。なのにほとんどの人が機会費用を十分に、またはまったく考えない。これこそがお金に関する最大のあやまちであり、ほかの多くのまちがいの原因でもある。
……私たちはだいたいにおいて、お金のほかの使い道を十分意識していない。そして困ったことに、機会費用を考えずに下す決定は、自分の利益にならないことが多い。
(ダン・アリエリー&ジェフ・クライスラー『アリエリー教授の「行動経済学」入門―お金編―』(早川書房、2018年)26, 28ページ)
よく考えずに副業をやってはみたものの、時間をかけた割に大した成果もせず、くたびれただけだったということになる人は無数にいると思います。
しかし、くたびれただけ、では済みません。
他にできたはずの活動ができなかったというダメージを受けているのです。
副業は基本おすすめしない。コスパが悪い投資だから
多くのサラリーマンに副業はおすすめできません。
見返りが乏しい。
サラリーマンが時間をかけているのは本業です。
本業に時間をかけているのだから、副業に充てる時間はその本業を補強するような活動の方がいいです。
サラリーマンが年収を上げる勉強【金持ちは勉強マシーン】で述べたように勉強をする方がいい場合が多い。
リフレッシュするために休んだり、遊びに行ったりするのも貴重な時間の使い方として大いにありうるものです。
こうした活動(自分がやろうとしてできる最高の活動)と比較して、副業は自分の得たいものを得られる時間の使い方なのか。
よく考えないといけません。
副業で大儲けした人がいるからといって自分がそれを真似できるわけではない
サラリーマンが副業に興味をもつきっかけの1つに大成功した先達の存在があります。
副業でサラリーマンの収入を超えたような人達はインフルエンサーとしてもてはやされます。
副業で大成功したインフルエンサーはこう言います。
- 平凡な私でしたが人生変わりました。
- 私にもできたのだからみんなできます。
副業人口が何人は知りませんが、たくさんいるはずです。
取り組む人がたくさんいれば、中には大成功する人が出てきます。
ほとんどの人が失敗し、ほんのわずかな人が成功します。
運の要素も大きい。
そうした成功者を見て、「大したことなさそうだから、自分にもできる(大儲けできる)」と思い、突撃を決める。
「自分も儲かるだろう」という思い込みだけに頼り、直感で突撃するのは仮想通貨投資と同じです。
人のずさんな意思決定がよく表れています。
- 人は、自信過剰である。
- 人は、考える負担の軽い直感に基づく決定を好み、頭にかかる負担の大きい慎重熟慮をしたがらない。
一部の成功者が「私にできた。あなたにもできる」は全く正しくありません。
自分と他人は全くの別人です。
どうしてある人ができたからといって他人である自分にもできると言えるのか。
「私に出来たのだから、あなたにもできる」
こう行動を促す扇動者の言葉には要注意。
自分と他人は違う。人は「自分がすでに習熟した知識や作業をほかの人が新たに学ぶ際に、かかる時間を少なく見積」る(ピーター・ブラウンほか『使える脳の鍛え方 成功する学習の科学』)
— にゃんがー@外資弁護士サラリーマン (@Nyanger_b) 2021年2月13日
年収を増やしたいなら本業集中の方がいい
副業で得られる収入は乏しいことが大半です。
サラリーマン業の傍らで限られた時間でやるため、明らかです。
本業で多くの時間を取られるため、副業に投資できる時間は限られています。
じゃあ時間をかければ成功できるかというと、「ノーリスク」と言われる費用があまりかからない気楽な副業はライバルも多い。時間をかけて勝てるとは限りません。
副業の収入とサラリーマンの本業の給料を比較すれば、本業の方がはるかにいい場合が多いはずです。
気楽な副業でサラリーマンのように年数百万円を稼ぐのは並大抵のことではできません。
しかも、副業収入は安定していません。
それに比べてサラリーマンは、毎月確実に収入を見込めます。
得られる収入の多さと安定性は、サラリーマンの給料は多くの副業に比べると圧倒的です。
得られる利益が多い活動の方を重視して時間の使い方を考えるべきです。
「大企業は安定という時代は終わった」と主張する扇動家は偉そうなことを言いたいだけである
- 「大企業にいれば安定という時代は終わった」
- 「安定企業も潰れることがあるのだから、生き残るスキルを身につけるべきだ」
こんなコメントをたまに見かけますが、「それっぽいこと」を言いたいだけにしか思えません。
個人で事業をするのと比べた場合、大企業の安定性は尋常でないほどに堅固です。
将来の行く末が常に不安定な個人事業主と比べたら、強大な組織を誇る企業の方が将来の安定性があることは明らかです。
また、企業の労働者は、法律で守られています。
簡単にクビにはなりません。
給料もおいそれとは減額できないようになっています。
数十年会社員として安定した環境で給料をもらい続けられる可能性は、とりわけ大企業であればかなり高い。
一部の破綻企業の例をみて「大企業にいれば安心なんてことはない」というのは、ごく少数の例外を見た極論です。
高く安定した給料を求めて安定大企業を志向するのはサラリーマンとして極めて合理的です。
副業したら企業で働く代替的な立派なスキルが身につくというのは短絡的すぎる考えです。
副業が全くダメというわけではない
副業が全部ダメとは考えていません。
投資に見合う活動であれば副業はした方がいい。
たとえば、今の仕事の給料が激安で、上がることはない。そういう場合は、副業の収入が乏しくても、副業をやった方が時間の使い方としていいかもしれません。
あとは、副業が本業のためになるとか、副業が単に楽しいからとかです。
時間の使い方として有効であれば(機会費用を考えて最適な活動といえるのであれば)、副業するのは良いことです。
サラリーマンが収入・資産を増やしたいなら副業より転職
サラリーマンが収入を増やしたいなら、転職の方が割に合います。
本業にかける時間が長いので、そのかける時間によって得られるものを増やすことを志向すべきです。
8割の本業に費やす時間と、2割の副業に費やせる時間がある場合、より多くのものを得るべく改善するのは本業の方です。
本業の方が通常得られる収入も多い。
得られる収入が多いことから、転職して年収が上がれば、その増加分は副業収入より大きくなりがちです。
年収500万円の人が転職して10%アップの結果550万円になれば、「年収プラス50万円」に成功したことになります。
副業で年50万円はかなり大変です。
転職なら職場を変えることで実現できます。
それは単年の出来事ではなく、来年、再来年もその「年収プラス50万円」効果は持続するのです。
サラリーマンは、副業に注力するよりも、現職をがんばったり、転職するなら
転職で年収をアップさせるコツを磨く方が将来的に多くの見返りを得られるはずです。
転職は若いうちが有利な理由は遺伝子の働きに適合的だから、で述べた通り、特に転職が有利な若いうちに会社員を早々とあきらめて「副業でビッグになる」というのは意思決定の仕方として将来的にダメージになります。
副業をしようかなと思ったら、それに充てる時間で別の何か最適なことはないかを考える。
機会費用を考え、ベストな時間の使い方をすべきです。
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