採用選考の通過率を高めるにはどうしたらよいか。
転職エージェントをうまく使いましょう。
転職エージェントから自分をうまく採用企業に売り込んでもらうのです。
直接応募ではなく転職エージェントという第三者に紹介してもらう形で応募するやり方は、第三者の社会的証明を得られるため効果的です。紹介の威力を甘くみるべからず。
また、自分を売り込んでくれるよい転職エージェントを選ぶ必要があります。
応募する段階になったら、リクルートエージェントやdodaのように企業と応募者の担当者を分けているエージェントよりもJACリクルートメントのような企業も応募者も1人の担当者が行う形態の転職エージェントの方がおすすめです。紹介能力が高いから。
1 自らアピールするよりも第三者である転職エージェントから紹介してもらう方が売り込み効果が高い
採用してもらうには、応募者は自分の労働力を採用者に買ってもらわねばなりません。
何もアピールせず、情報を採用者に与えなければ、採用側は判断できないので、採用してもらえません。
また、応募者の悪い情報を多く採用者に与えても採用してもらえません。
そのため、当然ながら応募者は、自分の良い面を採用企業にアピールしてもらう必要があります。
応募者がアピールするにあたっては、以下2つの問題があります。
- アピールするところはあるか
- アピールするところがあるとして、それがちゃんと伝わるのか
上記1は、何をアピールすべきかという問題です。
本記事では取り上げません。それについては転職面接に受かるアピール方法 | ハーバード流面接突破術で詳しく書きました。
本記事は、上記2の自分のアピールポイントをどう伝えるかという問題です。
なぜこれが問題になるほど難しいか。
自分で自分を売り込むのが難しいからです。信用してもらえない。
(1) 自らアピールすると自慢に聞こえてしまう
自分のことをすごい人だという人はそんなに好かれません。
むしろ嫌がられる。
社会心理学者も「他の人に専門知識を披露して認めさせようとすると、逆に自慢好きのうぬぼれ屋だと思われてしまうという問題」があるしています(ゴールドスタイン=マーティン=チャルディーニ『影響力の武器 実践編[第二版]:「イエス! 」を引き出す60の秘訣』(誠信書房、2019年12月)114ページ)。
自分がこんな知識があって、あなたはそれに従ったほうが良いですよ、という説明の仕方はうまくいきません。
相手はあなたをあまりよく思わないでしょう
(ゴールドスタイン=マーティン=チャルディーニ『影響力の武器 実践編[第二版]:「イエス! 」を引き出す60の秘訣』(誠信書房、2019年12月)114ページ)
採用面接であれば、「私は能力が高いです。あなたは私を採用すべきです」というようなもの。
面接官はこんな態度をそれほど高く評価しないはずです。
じゃあどうしたらよいのか。
臆面もない自己宣伝は問題外としても、あなたが本当に専門家である場合は、どうしたらよいでしょうか。
(同上)
自分に少しでもいいところがあれば、転職面接ではそれをきちんと伝えたい。
自分にいいところがたくさんあれば、感じの悪い自慢にならないように採用企業に説明したい。
この伝達ができるかどうかが鍵です。
(2) 他人に紹介してもらう威力
解決策は、「自分の代わりに誰か他の人に話してもらう」ことです(同上)。
転職の場面なら、転職エージェントから採用企業に話してもらうのがいい。
この方法は、昔から講演者、作家、アーティストなど公の場で話をする人たちがよく使っています。誰かに頼んで自分の専門知識や資格について伝えてもらうのは、驚くほど効果的な方法です。聴衆は話に引き込まれ、あからさまな自己宣伝によるデメリットも避けられます。
(ゴールドスタイン=マーティン=チャルディーニ『影響力の武器 実践編[第二版]:「イエス! 」を引き出す60の秘訣』(誠信書房、2019年12月)114ページ)
直接知らない人に自分を売り込むのは難しい。
なので、人は知っている人を介して自分を紹介してもらおうとします。
「紹介してくれ!」
これはとても理にかなったやり方です。効果的です。
したがって転職エージェントから自分を採用企業に紹介してもらうのはとても有効な転職活動といえます。
(3) 売り込み目的だと聞き手が知っていても紹介は効果的
問題は、採用企業が転職エージェントが「応募者を売り込む」立場にあると知っているということです。
採用企業は、転職エージェントから応募者の紹介アピールを受けても「あんたのところから応募した人を採用すれば、あんたの売上になるからそれだけプッシュしておすすめしてきてるんでしょ?」と思っている可能性があります。
そんな転職エージェントが応募者を採用企業に売り込んでも、採用企業には信用してもらえないのではないか?
社会心理学者の研究によると、そうはならないようです。
宣伝目的があるとわかっている転職エージェントからの売り込みでも、聞いてもらえる。
なぜそんなことが起きるのかというと、心理的な誤りによって、「転職エージェントという紹介屋の売り込みだ」という状況を人は無視してしまいます。
その結果、採用企業は、転職エージェントという商売目的で紹介してきたことを度外視し、その応募者がいい人かどうかだけを判断してしまうからです。
この心理的な誤りは「根本的な帰属の誤り」と呼ばれます。これは、「周囲の状況よりも、人のいつもの気質のほうの関連性を過剰に評価してしまうという誤り」のことです(リチャード・E・ニスベット『世界で最も美しい問題解決法 賢く生きるための行動経済学、正しく判断するための統計学』(青土社、2018年1月)175ページ)。
どういうことかというと、人は、他人を「この人はこういう人だから」と、その人の性格や人柄、気質だけでそそっかしく判断してしまい、その人が置かれた状況を度外視してしまうことです。
たとえば、昔中学校時代に不良だった同級生が大人になってからある職場で横領をして捕まったとうわさで聞くと、「やっぱりな」と思います。
しかし実際はその不良は大人になってからは真面目に働いており、実際はある職場の組織不正を暴こうと証拠を探していたところ、敵対する勢力の罠にかかってしまったという事情があったのかもしれません。
人がある言動を取るのは、「この人がこういう人だから」というだけでは説明になりません。その言動の背景や環境が相当に重要です。どんな状況だったから、その行動をした、ということも考慮に入れないといけません。
そうした状況を無視して「この人はこういう人だ」と判断してしまうのが根本的な帰属の誤りです。
人は、自分の判断においてこの根本的な帰属の誤りを正すことはできません。人の心理に根付いた強力な癖なのです。
採用面接は、根本的な帰属の誤りが発現しやすい場面です。
面接の錯覚と根本的な帰属の誤りは、同じ布から切り出されたものであり、どちらも、対象とする人についてもっている証拠の量に十分な注意を払わないことによって増幅される
(リチャード・E・ニスベット『世界で最も美しい問題解決法 賢く生きるための行動経済学、正しく判断するための統計学』(青土社、2018年1月)175ページ)
採用面接で根本的な帰属の誤りが発現しやすいということは、応募者にとっては都合がいい。
転職エージェントの売り込みを採用者に伝えやすいのです。
転職エージェントが応募者を採用企業にアピールして売り込むと、採用企業は「このアピールは転職エージェントの売り込みなので、話半分に聞かないと」とは思わない。
そうではなく、「この応募者はこんないい人材なのか」とその人そのものだけを見るようになる。
これが根本的な帰属の誤りの作用です。
転職活動では転職エージェントの売り込みを存分に使うべきなのです。
ジェフリー・フェファーらの行った研究では、状況的な要因を考慮に入れない人が大多数であるため、自分の能力を保証してくれる仲介役を雇うのは効果的な説得方法だということが示されています。
(ゴールドスタイン=マーティン=チャルディーニ『影響力の武器 実践編[第二版]:「イエス! 」を引き出す60の秘訣』(誠信書房、2019年12月)115ページ)
フェファーさんが出した上記の結論を導く実験は以下のようなものです。
【実験】
- 実験参加者たちに「想像してください。あなたは出版社の編集者です。大物の作家を担当しています。」とお願いする。
- そんな編集者になりきった実験参加者が、作家を評価します。
- 参加者はグループAとグループBに分かれます。
- 参加者グループAは、ある作家の業績を代理人が派手に書き上げた文章を読みました。
- 参加者グループBは、グループAに与えられたのと同じ文章を作家自身が書いたものを読みました。
【結果】
あらゆる点、特に好ましさの点で、作家が自画自賛した場合よりも代理人が売り込みをした場合のほうが、その作家に対する評価はより好意的だった
(ゴールドスタイン=マーティン=チャルディーニ『影響力の武器 実践編[第二版]:「イエス! 」を引き出す60の秘訣』(誠信書房、2019年12月)115ページ)
上記の実験結果からわかるのは、まず、全く同じアピールであっても、自分からより他人からアピールしてもらった方がいいということです。
次に大事なのが、「これは代理人による派手な売り込みだ」とわかっていても、人はそうした状況を無視し、「その作家はどんな人か」という評価をしてしまったのです。根本的な帰属の誤りがよくあらわれた場面といえます。
転職活動でも当然これと同じことが起きます。
使えるなら転職エージェントを転職活動ではうまく使いましょう。
2 売り込み能力の高い転職エージェントとは
採用企業に対して自分を売り込むには転職エージェントを活用するのが効果的とわかった。
転職エージェントを使おう。
ではどんな転職エージェントを使えばよいのか?
自分の代わりに採用企業にアピールしてもらう、ということを考えると、以下2方向から転職エージェントを評価すべきです。
①採用企業と転職エージェントの関係
②応募者と転職エージェントの関係
(1) 転職エージェントは採用企業のことをよく知っているか
転職エージェントは、採用側のことをよく知らなければなりません。
- どんなビジネスをしているか。
- どの部署の採用か。
- なぜその採用が行われるのか。
- 採用担当者は誰か。
- その採用担当者はどんな人物を採用したいと思っているのか。
採用企業は「人を求める」側です。
何を求めるかを知らずして、適切な売り込みはできません。
「雲(くも)が見たいなあ」という人に対して、「蜘蛛(くも)ですね!捕まえてきました!どうぞ見てください!」とアピールしても効果はありません。
転職では、採用したいと思っている人物像にかなう人を紹介しなければならないのです。
私は50人以上の転職エージェントと面談していますが、採用企業のことをわかっていない転職エージェントの方が圧倒的に多いです。
転職エージェントの多数派は「細かいこと言ってないでとにかく応募しろ」です。
ある転職エージェントは、私が採用企業について質問したら「それは面接で聞かれるとよいと思います」と回答をしてきました。
その転職エージェントは、応募者が応募前に持つであろう疑問程度の知識もその採用企業について持っていないということがよくわかりました。
転職エージェントの真のクライアントは採用企業です。
クライアントのことをよくわからずに仕事をする者は優秀とは言えません。
(2) 転職エージェントは応募者のアピールポイントを把握しているか
転職エージェントは、応募者の代わりに採用企業に対してアピールするという重責を担っています。
全く知らない赤の他人を売り込むというのは難しい作業です。
ボーっと30分か1時間面談をやっただけで応募者のアピールポイントを見つけ出すのは難しい。
転職エージェントは、面談ではよく話を聞き、わからない点は応募者に質問し、メモを取り、応募者をどうアピールするかを考えねばなりません。
転職エージェントが上から目線で「あなたのキャリアは」とか抽象論を振りかざすなんて論外です。
この応募者はどんな能力があり、どの企業に買ってもらえるかを見極めねばならないのです。
転職エージェントは、応募者に対する理解力も持ち合わせていなければなりません。
3 売り込み能力の高い転職エージェントの選び方
具体的にどんな転職エージェントを選ぶべきか。
(1) 同じ人が企業と応募者両方を担当する形態の転職エージェント
端的に言えば、リクルートエージェントとかdodaとかマイナビと言った大手スタイルではなく、小規模転職エージェントの方が、「紹介力」の面では上です。
適切に紹介するには、企業のことを知り、応募者のことも知って、両者を突き合せなければなりません。
大手人材紹介会社は、自社の効率性を重視し、企業だけを担当する人と応募者だけを担当する人の分業スタイルを取っています。
この分業スタイルでは、応募者の良い面のアピールはうまく採用企業に伝わりません。
大手人材紹介会社では、 JACリクルートメントが大手ながら小規模会社のように企業と応募者を同じ人が担当しています。
内定をより高い確率で取りたいなら、こうしたエージェントの方がおすすめです。
JACリクルートメントのポイント
- 3大転職エージェントの1つ
- 高額案件に強い
- 内定獲得力が高い
▼公式サイト
リクルートエージェントやdodaといった大手を勧めないわけではありません。
大手は求人件数が多いです。大手でないと見つからない求人情報もあります。
(2) 採用企業とのコネがある
紹介にあたっては、これは重要なポイントです。
転職エージェントが、採用企業の採用担当者と昔から知り合いなら、その転職エージェントに自分を紹介してもらえる応募者はとても有利です。
転職エージェントに対して、「あなたは採用担当者とどんなコネがありますか」と聞いてみましょう。
「今の採用担当者は、中途入社するときに私が担当していた」と言われることもあります。
(3) 転職エージェントとのやりとりで見るべき点
以下2つを転職エージェントがきちんとしているか見ましょう。
①採用企業について質問したらきちんと答えられるか。
クライアントである採用企業のことを知っているかということです。採用企業のことを知らない人が適切な売り込み代理人になれないのは上述したとおりです。
採用企業のことについて面接前に情報収集できれば応募者は非常に助かります。情報収集不十分な他のライバル応募者よりも有利。
採用企業についての質問に答えられず「面接で聞いてください。まず応募しましょう」という転職エージェントは最悪です。
M社からS社に移ったSさん、かつて私に言ったあんたの発言のことを言ってるんだぞ。
②応募者のことを知ろうとしているか。
応募者について全然質問しない転職エージェントはダメです。期待しない方がいい。質問しないで応募者のことがわかるはずがない。応募者のことがわからずに採用企業に効果的な売り込みはできません。
そういう転職エージェントは、大して売り込みもせず、下手な鉄砲数打ちゃ当たれの発想を持っています。とりあえず応募させておけばどっかは内定が出るだろうと。
そんな発想の転職エージェントからは応募したくありません。
「採用企業はこんな人を採りたいと思っている。この応募者にはそれに合致する経験などはあるか」と考えながら応募者のことを聞かねばなりません。これが優秀な転職エージェントです。
キャリアコンサルタントとか、そういうのはおまけです。
転職エージェントの本来の仕事は、紹介です。
高確率で内定をもらえる転職エージェントこそあるべき優秀な転職エージェント。
自分のことについて質問をしてきた転職エージェントがメモをきちんと取っているかもポイントです。
面談結果を聞き流したら、後で採用企業に応募者のことをアピールするときに何が良い点だったのかを忘れてしまうからです。
4 転職エージェントにやってもらうべきこと【使い方】
よい転職エージェントを選んだら、やってもらうべきことは複雑なことではありません。
適切に応募者を売り込んでもらうだけです。
熟練した第三者に代理として自分の専門知識について話してもらうのは、大変実り多く価値のある方法だということが分かります(そればかりか、可能ならば第三者に契約条件や報酬についても交渉してもらうべきです)。また、あなたをあまりよく知らない人たちにプレゼンテーションを行う場合は、他の人にあなたの紹介をしてもらってください。一番効率的なのは、簡単な自己紹介を代弁してもらうことです。長いものは不要ですが、少なくともあなたの経歴、研修経験、学歴など、当の話題についてプレゼンテーションする資格があることがはっきり分かる内容でなくてはなりません。その分野での実績について触れられていれば、なおよいでしょう。
(ゴールドスタイン=マーティン=チャルディーニ『影響力の武器 実践編[第二版]:「イエス! 」を引き出す60の秘訣』(誠信書房、2019年12月)115ページ)
売り込みといっても、簡単な自己紹介を代わりにやってもらうだけでよいのです。
そして、「あなたがた採用企業が求めているのはこれです。この応募者の経歴はこれこれです。したがって、あなた方の求めている人物といえます。」と紹介してくれればいいのです。
シンプルなことですが、多くの転職エージェントはできません。
なぜできないのか?
自分の仕事を理解していないからです。
転職で成功したいのであれば、転職エージェント選びは重要です。
5 大手の中ではJACリクルートメントが紹介能力が高い
本記事の観点(転職エージェントに紹介してもらって転職の成功率をあげる)からすれば、 JACリクルートメントがおすすめです。
JACリクルートメントも多数のエージェントを抱えているので、誰がいいかはわかりませんが、両面型を取っているという構造上、おすすめです。
大手転職エージェントだと、JACリクルートメントくらいしか両面型(企業と応募者を同じ人が担当)のスタイルを取っていないからです。
小規模の転職エージェントだと両面型を取っていますが、求人件数が少なかったり、社長兼エージェントが曲者だったりして難しい。
JACリクルートメントだと大手と小規模のいいとこ取りです。
JACリクルートメントの会社の方は「JACリクルートメントの決定力は他大手より高い」と説明していました。
紹介力があるため、内定が取りやすいということです。
JACリクルートメントのポイント
- 3大転職エージェントの1つ
- 両面型スタイルで、企業と応募者両方を同じ人が担当
- 紹介力・内定獲得力が高い
JACリクルートメントへの相談体験談等は以下記事をお読みください。
JACリクルートメントの評判を知りたい人向けの転職体験談 | 転職キャリアルール (career-rule.com)
JACリクルートメントはハイクラス転職におすすめのエージェント | 転職キャリアルール (career-rule.com)
私は、JACリクルートメントも登録していますが、外資系企業の方が条件がよい案件が多く、実はJACリクルートメントは外資系企業求人情報はあまり多くないため、外資系の転職エージェントをよく利用しています。
国内企業の転職希望ならJACリクルートメントはとりわけおすすめです。
外資系企業転職の際の外国人転職エージェントはいいかげんな人も多いので要注意です。
▼外資系企業への転職を希望する方向けのおすすめ転職エージェントはこちら。
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